最判平成21年1月19日
修繕義務不履行による店舗賃借人の営業利益喪失は通常損害だが、損害回避措置を執り得た時期以降の損害のすべては請求できない
出題:司法H27・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成19(受)102 損害賠償請求本訴,建物明渡等請求反訴事件
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第63巻1号97頁
- 参照法条
- 民法416条1項,民法606条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできないとされた事例
裁判要旨
ビルの店舗部分を賃借してカラオケ店を営業していた賃借人が,同店舗部分に発生した浸水事故に係る賃貸人の修繕義務の不履行により,同店舗部分で営業することができず,営業利益相当の損害を被った場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,遅くとも賃貸人に対し損害賠償を求める本件訴えが提起された時点においては,賃借人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を執ることなく発生する損害のすべてについての賠償を賃貸人に請求することは条理上認められず,賃借人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない。 (1) 賃貸人が上記修繕義務を履行したとしても,上記ビルは,上記浸水事故時において建築から約30年が経過し,老朽化して大規模な改修を必要としており,賃借人が賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。 (2) 賃貸人は,上記浸水事故の直後に上記ビルの老朽化を理由に賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしており,同事故から約1年7か月が経過して本件訴えが提起された時点では,上記店舗部分における営業の再開は,実現可能性の乏しいものとなっていた。 (3) 賃借人が上記店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は,それ以外の場所では行うことができないものとは考えられないし,上記浸水事故によるカラオケセット等の損傷に対しては保険金が支払われていた。
解説
事案
Y1(事業協同組合)は、昭和42年に建築した自己所有ビルの地下1階店舗部分を、平成4年にX(カラオケ店経営会社)に賃貸した。期間は平成7年に満了したが、継続の協議が成立しないままXは営業を続けていた。
- 店舗部分では平成4年頃から浸水が頻発し、原因不明のことも多かった。
- 平成9年2月12日、排水用ポンプの不良等が原因で床上30〜50cmまで浸水した(本件事故)。以後、Xは営業できなくなった。
- Y1は直後の2月18日付書面で、ビルの老朽化等を理由に契約解除を通知した。Y1の代表者Y2はXの修繕要求に応じず、退去を求めて地下1階の電源を遮断した。
- ビルは大規模改装・設備更新を要する状態だったが、使用不能ではなかった。
- Xは同年5月、カラオケセット等の損傷について保険金計約3711万円を受領した(営業利益損失分は含まない)。
Xは営業再開のめどが立たないまま、事故から約1年7か月後の平成10年9月、営業利益喪失等の損害賠償を求めて本訴を提起した。請求の根拠は、Y1に対しては債務不履行・瑕疵担保責任、Y2に対しては民法709条等である。原審は、事故の1か月後から平成13年8月までの4年5か月分の得べかりし営業利益の全額(約3104万円)を認めた。
争点
- 賃貸人の修繕義務不履行により店舗で営業できなくなった賃借人の営業利益喪失は、民法416条1項の通常生ずべき損害に当たるか
- 賃借人が損害を回避・減少させる措置を執らないまま拡大した損害のすべてを、通常損害として賠償請求できるか
判旨
原判決のうち本訴請求部分を破棄し、原審に差し戻した。
- 原則:事業用店舗の賃借人が賃貸人の債務不履行により店舗で営業できなくなった場合、営業利益喪失の損害は、債務不履行により通常生ずべき損害として民法416条1項により賠償を求めることができる。
- 限定:本件の事情の下では、遅くとも本訴提起時点においては、賃借人が別の場所で営業を再開する等の損害回避・減少措置を何ら執らずに損害が発生するにまかせ、そのすべての賠償を請求することは条理上認められない。
- 結論:416条1項の通常損害の解釈上、上記措置を執ることができたと解される時期以降の営業利益相当の損害のすべてを請求することはできない。
原審は、措置を執り得た時期やそれ以降の賠償範囲を検討せずに全期間の損害を認めた。この点が416条1項の解釈の誤りとされた。
判決文から
「賃借人に生じた営業利益喪失の損害は,債務不履行により通常生ずべき損害として民法416条1項により賃貸人にその賠償を求めることができると解するのが相当である。」
営業利益喪失が通常損害に当たるという原則
「損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく,本件店舗部分における営業利益相当の損害が発生するにまかせて,その損害のすべてについての賠償を上告人らに請求することは,条理上認められない」
損害回避措置を怠った場合の制限根拠は条理
「民法416条1項にいう通常生ずべき損害の解釈上,本件において,被上告人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における上記営業利益相当の損害のすべてについてその賠償を上告人らに請求することはできないというべきである。」
416条の賠償範囲の問題として処理し「すべて」を否定
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
