インカメラ審理事件
情報公開訴訟では、明文がない以上、原告が立会権を放棄しても、不開示文書のインカメラ審理(検証・提示命令)は許されない。
出題:司法H25・予備H30・予備R4
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成20(行フ)5 検証物提示命令申立て一部提示決定に対する許可抗告事件
- 裁判
- 決定・破棄自判
- 判例集
- 民集 第63巻1号46頁
- 参照法条
- 民訴法223条1項,民訴法232条1項,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)5条,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)9条2項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることの許否
裁判要旨
情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは,原告が検証への立会権を放棄するなどしたとしても許されず,上記文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることも許されない。 (補足意見がある。)
解説
事案
本件の本案は、情報公開法に基づき外務省の保有する行政文書(平成16年8月に沖縄県宜野湾市で起きた米軍海兵隊ヘリ墜落事故をめぐる日米両政府の協議等の関連文書)の開示を求めた事件である。外務大臣は、情報公開法5条1号・3号・5号に該当するとして、全部又は一部を不開示とした。開示請求者(相手方)は国(抗告人)を被告として不開示決定の取消訴訟を提起した。
相手方は、不開示文書の検証を申し出るとともに、国に対して検証物提示命令(民訴法232条1項・223条1項)を申し立てた。その際、検証への立会権を放棄し、文書の記載内容の詳細が明らかになる方法での検証調書の作成も求めないと陳述した。
原審(福岡高裁)は、この申出を実質的にインカメラ審理を求めるものと位置づけた。そのうえで、情報公開法はインカメラ審理を全く許さない趣旨ではないとし、5条3号・5号を理由とする不開示文書について提示命令を認容した。国が許可抗告した。
争点
- 情報公開訴訟において、不開示文書を目的とする検証を被告に受忍させ、その提示を命ずることができるか
- 明文の規定なしに、証拠調べとしてのインカメラ審理を行うことができるか
- 原告が検証への立会権を放棄すれば、結論が変わるか
判旨
原決定を破棄し、検証物提示命令の申立てを不適法として却下した。
- 規範1:情報公開訴訟において、不開示文書を対象とする検証を被告に受忍させると、文書が開示されたのと実質的に同じ事態が生じ、訴訟の目的を達してしまう。これは情報公開制度の趣旨に照らして不合理である。したがって、被告に検証受忍義務を負わせて検証することは許されず、そのための提示命令も許されない。
- 規範2:証拠調べとしてのインカメラ審理は、当事者の吟味・弾劾の機会を経た証拠のみを用いるという民事訴訟の基本原則に反する。そのため、明文の規定がない限り許されない。
- 結論:原告が立会権を放棄し、検証調書の作成方法にも配慮を求めたとしても、上記の結論は変わらない。
判決文から
「不開示とされた文書を対象とする検証を被告に受忍させることは,それにより当該文書の不開示決定を取り消して当該文書が開示されたのと実質的に同じ事態を生じさせ,訴訟の目的を達成させてしまうこととなる」
通常の検証が許されない理由
「訴訟で用いられる証拠は当事者の吟味,弾劾の機会を経たものに限られるということは,民事訴訟の基本原則である」
インカメラ否定の根拠となる基本原則
「情報公開訴訟において証拠調べとしてのインカメラ審理を行うことは,民事訴訟の基本原則に反するから,明文の規定がない限り,許されないものといわざるを得ない。」
答案に書ける中心規範
「相手方が立会権の放棄等をしたとしても,抗告人に本件不開示文書の検証を受忍すべき義務を負わせてその検証を行うことは許されないものというべきである」
立会権放棄でも結論不変
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