最決平成20年6月25日
正当防衛の第1暴行と、反撃不能の相手への専ら攻撃意思による第2暴行は断絶し、1個の過剰防衛とはならない
出題:司法H24・司法R2・司法R7・予備H23・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成20(あ)124 傷害被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第62巻6号1859頁
- 参照法条
- 刑法36条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
正当防衛に当たる暴行及びこれと時間的,場所的に連続して行われた暴行について,両暴行を全体的に考察して1個の過剰防衛の成立を認めることはできないとされた事例
裁判要旨
相手方の急迫不正の侵害に対し,正当防衛に当たる暴行(以下「第1暴行」という。)を加えて同人を転倒させた被告人が,これと時間的,場所的に連続して暴行(以下「第2暴行」という。)を加えた場合において,相手方が更なる侵害行為に出る可能性のないことを認識した上,防衛の意思ではなく,専ら攻撃の意思に基づき相当に激しい態様の第2暴行を加えたなどの本件事実関係の下では,第1暴行と第2暴行の間には断絶があって,急迫不正の侵害に対して反撃を継続するうちに,その反撃が量的に過剰になったものとは認められず,両暴行を全体的に考察して1個の過剰防衛の成立を認めるのは相当ではない。
解説
事案
被告人(64歳)は、以前にも因縁を付けて暴行してきた甲(76歳)に呼び出された。甲はいきなり殴り掛かり、被告人をフェンスに押し付けてひざや足で数回けった。被告人はけり返し、甲の顔面を1回殴打した。すると甲はアルミ製灰皿(直径19cm、高さ60cmの円柱形)を投げ付けた。被告人はこれを避け、反動で体勢を崩した甲の顔面を右手で殴打した。甲は頭部から転倒して後頭部をタイルの地面に打ち付け、意識を失ったように動かなくなった(ここまでが第1暴行)。
被告人は憤激の余り、その状況を十分に認識しながら「おれを甘く見ているな。おれに勝てるつもりでいるのか。」などと言い、甲の腹部等を足げにし、踏み付け、ひざ頭を落とした(第2暴行)。これにより甲は肋骨骨折、脾臓挫滅等を負った。甲は約6時間後に死亡したが、死因の傷害は第1暴行によるものであった。
第1審は全体を1個の過剰防衛による傷害致死罪とした。原審は第1暴行に正当防衛を認め、第2暴行について傷害罪とした。
争点
- 正当防衛に当たる第1暴行と、時間的・場所的に連続する第2暴行を全体的に考察して1個の過剰防衛(量的過剰)とみることができるか
- 第2暴行について正当防衛・過剰防衛が成立するか(侵害の継続性・防衛の意思)
- 第2暴行について被告人が負う刑事責任の範囲
判旨
上告棄却(原審の傷害罪を維持)。
- 第1暴行で転倒した甲には、更なる侵害行為に出る可能性がなかった。被告人はそれを認識した上で、専ら攻撃の意思に基づき第2暴行に及んだ。したがって第2暴行は正当防衛の要件を満たさない。
- 両暴行は時間的・場所的に連続している。しかし、侵害の継続性と防衛の意思の有無の点で明らかに性質を異にする。さらに、抵抗不能の甲に対する相当に激しい態様の暴行であることも考え合わせると、両者の間には断絶がある。急迫不正の侵害に反撃を継続するうちに反撃が量的に過剰になったものとは認められない。
- よって、両暴行を全体的に考察して1個の過剰防衛を認めるのは相当でない。第1暴行は罪に問えない。第2暴行には過剰防衛を論ずる余地もなく、これによる傷害について傷害罪が成立する。
規範:時間的・場所的に連続する複数の暴行も、侵害の継続性と防衛の意思の有無の点で性質を異にし、両者の間に断絶がある場合には、全体を1個の過剰防衛とはみない。各暴行を個別に評価する。
判決文から
「第1暴行により転倒した甲が,被告人に対し更なる侵害行為に出る可能性はなかったのであり,被告人は,そのことを認識した上で,専ら攻撃の意思に基づいて第2暴行に及んでいる」
侵害終了の客観面と認識・攻撃意思の主観面
「甲による侵害の継続性及び被告人の防衛の意思の有無という点で,明らかに性質を異にし」
分断の判断要素(侵害継続性・防衛意思)
「その間には断絶があるというべきであって,急迫不正の侵害に対して反撃を継続するうちに,その反撃が量的に過剰になったものとは認められない。」
量的過剰の成立を否定する核心部分
「第2暴行については,正当防衛はもとより過剰防衛を論ずる余地もないのであって,これにより甲に負わせた傷害につき,被告人は傷害罪の責任を負う」
第2暴行単独で傷害罪とする結論
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
