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自衛隊イラク派遣差止訴訟

名古屋高判平成20年4月17日

空自のバグダッド空輸は憲法9条1項違反の活動を含み、平和的生存権は具体的権利性をもちうるとしつつ、請求は退けた高裁判決

憲法違憲審査制・憲法訴訟天皇・平和主義本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法H25・予備H29

裁判所
名古屋高等裁判所民事第3部
事件番号
平成18(ネ)499 自衛隊のイラク派兵差止等請求控訴事件

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

イラクにおいて航空自衛隊が行っている空輸活動は,武力行使を禁止したイラク特措法2条2項,活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し,かつ,憲法9条1項に違反する活動を含むものではあるが,これによる控訴人らの平和的生存権に対する侵害は認められないとして,控訴人らによる自衛隊のイラク派遣に対する違憲確認の訴え及び派遣差止めの訴えを却下し,国家賠償請求を棄却した原判決を維持した事例

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

イラク特措法(平成15年)に基づき、政府は自衛隊をイラク及び周辺地域へ派遣した。陸上自衛隊は平成18年7月にサマワから撤退した。一方、航空自衛隊はC-130H輸送機3機を用い、同月以降、米国の要請を受けて、クウェートのアリ・アルサレム空港からバグダッド空港へ週4〜5回、定期的に空輸を続けた。輸送対象の大多数は武装した多国籍軍(主に米軍)の兵員であった。

控訴人らは、本件派遣は違憲であり、平和的生存権ないし「戦争や武力行使をしない日本に生存する権利」等を侵害されたと主張し、次の請求をした。

  • 国家賠償法1条1項に基づく各1万円の損害賠償
  • 一部の控訴人による派遣の差止め
  • 一部の控訴人による派遣が憲法9条に反することの確認

原審(名古屋地裁)は、差止め・違憲確認の訴えを却下し、損害賠償請求を棄却した。控訴人らが控訴した。

争点

  • 航空自衛隊のバグダッドへの空輸活動は、イラク特措法2条2項・3項及び憲法9条1項に違反するか(他国の武力行使との一体化)
  • 憲法前文の平和的生存権は法的権利か、具体的権利性をもつか
  • 違憲確認の訴えに確認の利益があるか
  • 派遣差止めの訴えの適法性(民事訴訟として・抗告訴訟として)
  • 平和的生存権侵害を理由とする国家賠償請求の可否

判旨

控訴棄却。違憲確認・差止めの訴えは不適法として却下、損害賠償請求は棄却という原判決の結論を維持した。もっとも、理由中で次のとおり判断した。

  • 空輸活動の違憲性:バグダッドは、多国籍軍と国に準ずる組織と認められる武装勢力との間で国際的な武力紛争が行われている地域であり、イラク特措法上の「戦闘地域」にあたる。多国籍軍の武装兵員をバグダッドへ空輸する活動は、他国の武力行使と一体化した行動である。したがって、政府解釈に立ちイラク特措法を合憲とした場合でも、空輸活動は同法2条2項・3項に違反し、かつ憲法9条1項に違反する活動を含む。
  • 平和的生存権:憲法上の法的権利である。憲法9条違反の国の行為により、個人の生命・自由が侵害され又は侵害の危機にさらされる場合、現実的な戦争等による被害や恐怖にさらされる場合、9条違反の戦争遂行等への加担・協力を強制される場合には、差止請求・損害賠償請求等で救済を求めうる。その限りで具体的権利性がある。
  • 本件へのあてはめ:控訴人らについては、上記の事態は生じていない。平和的生存権の侵害は認められず、原告適格も被侵害利益もない。

判決文から

「武力行使を禁止したイラク特措法2条2項,活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し,かつ,憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。」

空自空輸活動の違憲判断の結論部分

「他国による武力行使と一体化した行動であって,自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる。」

政府の一体化論をあてはめて違憲を導いた箇所

「全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であるということができ,単に憲法の基本的精神や理念を表明したに留まるものではない。」

平和的生存権の位置づけ

「平和的生存権は,憲法上の法的な権利として認められるべきである。」

平和的生存権の法的権利性の肯定

「憲法9条に違反する国の行為,すなわち戦争の遂行,武力の行使等や,戦争の準備行為等によって,個人の生命,自由が侵害され又は侵害の危機にさらされ,あるいは,現実的な戦争等による被害や恐怖にさらされるような場合」

具体的権利性が認められる場面の例示

「全証拠によっても,現時点において,控訴人Aらの具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められない。」

本件では侵害なしとして請求を退けた根拠

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。