政見放送削除事件
公選法150条の2に違反する差別用語の発言は、削除して放送されても不法行為法上の法的利益の侵害にならないとした判例
出題:司法H29・予備H29・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和61(オ)800 損害賠償
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第44巻3号547頁
- 参照法条
- 民法709条,公職選挙法150条1項,公職選挙法150条の2
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
政見放送における発言部分が公職選挙法一五〇条の二に違反する場合と右部分がそのまま放送されなかつたことによる法的利益の侵害の有無
裁判要旨
政見放送において身体障害者に対するいわゆる差別用語を使用した発言部分が公職選挙法一五〇条の二に違反する場合、右部分がそのまま放送されなかつたとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があつたとはいえない。
解説
事案
上告人Aは、昭和58年6月26日実施の参議院(比例代表選出)議員選挙に際し、被上告人B放送協会の放送設備で上告人雑民党の政見を録画した。B放送協会は、録画中のAの発言のうち「めかんち、ちんばの切符なんか、だれも買うかいな」という部分(本件削除部分)の音声を削除し、同年6月16日と20日にテレビジョン放送した。B放送協会は削除にあたり自治省行政局選挙部長に見解を照会していたが、削除は自らの判断で行った。当時、身体障害者に対する侮蔑的表現である差別用語の使用は社会的に許容されないと広く認識されていた。上告人らは、音声削除が政見をそのまま放送される権利を侵害する不法行為(民法709条)に当たるとして損害賠償を求め、あわせて削除は憲法21条2項前段の検閲に当たると主張した。原審は不法行為の成立を否定し、最高裁は上告を棄却した。
争点
- 公選法150条の2に違反する政見放送の発言部分を削除して放送したことが、不法行為法上の法的利益の侵害に当たるか
- B放送協会による政見放送の音声削除が憲法21条2項前段の「検閲」に当たるか
判旨
結論:不法行為は成立しない。削除は検閲に当たらない。
- 本件削除部分は、多くの視聴者が注目するテレビ放送で、使用が社会的に許容されないと広く認識されていた身体障害者に対する卑俗かつ侮蔑的な差別用語を使ったものである。したがって、他人の名誉を傷つけ善良な風俗を害する等、政見放送としての品位を損なう言動を禁じた公選法150条の2に違反する。
- 規範:公選法150条の2に違反する言動がそのまま放送される利益は、法的に保護された利益とはいえない。よって、その言動がそのまま放送されなくても、不法行為法上の法的利益の侵害はない。
- 検閲の定義は税関検査事件(最大判昭和59年12月12日)による。B放送協会は行政機関ではなく、自らの判断で削除したから、検閲に当たらないことは明らかである。
- 違憲の主張は、実質は単なる法令違背の主張にすぎないとして退けた。
判決文から
「右規定に違反する言動がそのまま放送される利益は法的に保護された利益とはいえず、したがつて、右言動がそのまま放送されなかつたとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえないと解すべきである。」
本判決の中心となる規範
「テレビジョン放送による政見放送が直接かつ即時に全国の視聴者に到達して強い影響力を有していることにかんがみそのような言動が放送されることによる弊害を防止する目的で政見放送の品位を損なう言動を禁止したものである」
公選法150条の2の趣旨(テレビの影響力)
「被上告人B放送協会は、行政機関ではなく、自治省行政局選挙部長に対しその見解を照会したとはいえ、自らの判断で本件削除部分の音声を削除してテレビジョン放送をしたのであるから」
検閲該当性を否定した理由(主体要件)
「候補者の政見については、それがいかなる内容のものであれ、政見である限りにおいて、B放送協会等によりその録音又は録画を放送前に削除し又は修正することは、法一五〇条一項後段の規定に違反する行為と見ざるを得ないのである。」
園部補足意見の結論(150条1項後段違反)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
