最判平成2年12月18日
委託を受けた物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、事前求償権を行使できない(民法460条の類推適用を否定)。
出題:司法H24・司法R7
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成2(オ)801 求償金
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第44巻9号1686頁
- 参照法条
- 民法351条,民法372条,民法460条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
物上保証人と求償権の事前行使の可否
裁判要旨
物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、あらかじめ求償権を行使することはできない。
解説
事案
債務者の委託を受け、その債務を担保するために自己の不動産に抵当権を設定した者(物上保証人)である上告人が、債務者に対して求償金の支払を求めた事案である。
- 上告人は、被担保債権の弁済をしておらず、抵当権の実行によって被担保債権が消滅したわけでもない。
- そのうえで、被担保債権の弁済期が到来したことを理由に、あらかじめ求償権を行使する(事前求償する)ことを主張した。
- 上告人は、委託を受けた保証人の事前求償権を定める民法460条を、委託を受けた物上保証人にも類推適用すべきだと主張した。
原審(大阪高裁)は事前求償を否定して請求を棄却した。上告人が上告したが、最高裁第三小法廷は全員一致で上告を棄却した。
争点
- 委託を受けた物上保証人は、被担保債権の弁済期到来後に、債務者に対し事前求償権を行使できるか
- 民法372条・351条による保証債務規定の準用、または民法460条の類推適用によって、物上保証人に事前求償権を認めることができるか
判旨
結論:債務者の委託を受けて抵当権を設定した物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、債務者に対してあらかじめ求償権を行使することはできない。
規範(答案用):
- 物上保証人が求償権を取得するのは、自ら被担保債権を弁済したとき、または抵当権の実行によって被担保債権が消滅したときである(民法372条・351条)。
- その求償の範囲については、保証債務に関する規定が準用される。
- しかし、この準用規定は事前求償を許す根拠にならず、ほかに事前求償を許す規定もない。
- また、物上保証の委託と保証の委託には本質的な違いがあるため、委託を受けた保証人の事前求償権(民法460条)を物上保証人に類推適用することもできない。
判決文から
「債務者の委託を受けてその者の債務を担保するため抵当権を設定した者(物上保証人)は、被担保債権の弁済期が到来したとしても、債務者に対してあらかじめ求償権を行使することはできないと解するのが相当である。」
結論部分。委託あり・弁済期到来でも否定
「物上保証の委託は、物権設定行為の委任にすぎず、債務負担行為の委任ではないから、受託者が右委任に従って抵当権を設定したとしても、受託者は抵当不動産の価額の限度で責任を負担するものにすぎず」
保証の委託との本質的相違を示す核心
「求償権の範囲はもちろんその存在すらあらかじめ確定することはできず」
事前求償を否定する実質的理由
「委託を受けた保証人の事前求償権に関する民法四六〇条の規定を委託を受けた物上保証人に類推適用することはできないといわざるをえない。」
460条類推適用の否定を明示
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