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千日デパートビル火災事件

最決平成2年11月29日

雑居ビル火災で、デパートとキャバレーの防火管理者・管理権原者に管理・監督過失による業務上過失致死傷罪を認めた

刑法過失本試験で 3 問(短答 3・論文 0)

出題:司法H28・司法R3・予備R3

裁判所
最高裁判所第一小法廷
事件番号
昭和62(あ)1480 業務上過失致死傷
裁判
決定・棄却
判例集
刑集 第44巻8号871頁
参照法条
刑法211条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

デパートビルの火災事故においてデパートの管理課長並びにビル内のキャバレーの支配人及び代表取締役に業務上過失致死傷罪が成立するとされた事例

裁判要旨

閉店後工事が行われていたデパートビルの三階から火災が発生し、多量の煙が七階で営業中のキャバレーの店内に流入したため、多数の死傷者が生じた火災事故において、デパートの管理課長には、防火管理者として、三階の防火区画シャッター等を可能な範囲で閉鎖し、保安係員等を工事に立ち会わせ、出火に際して直ちにキャバレー側に火災発生を連絡させるなどの体制を採るべき注意義務を怠った過失があり、キャバレーの支配人には、防火管理者として、階下において火災が発生した場合、適切に客等を避難誘導できるように平素から避難誘導訓練を実施しておくべき注意義務を怠った過失があり、キャバレーを経営する会社の代表取締役には、管理権原者として、防火管理者が防火管理業務を適切に実施しているかどうかを具体的に監督すべき注意義務を怠った過失があり、それぞれ業務上過失致死傷罪が成立する。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

C社が所有・管理する地下1階・地上7階の雑居ビル(Aデパート)では、6階以下をCが使用し、7階でCの子会社D社がキャバレー「J」を営業していた。Cの管理課長Gはデパートの防火管理者、D社代表取締役IはJの管理権原者、J支配人KはJの防火管理者であった。

  • デパートは午後9時閉店後、保安係員5名のみが残る。Jだけが午後11時まで営業していた。
  • 防火区画シャッター等は閉店後も閉鎖されていなかった。Jへの通報設備もなかった。
  • Jから安全に避難できる唯一の経路はB階段だったが、階下出火を想定した訓練は一切行われていなかった。救助袋も一部破損し、使用訓練もなかった。

閉店後、3階で電気工事中に原因不明の火災が発生した。保安係員はJへの通報を失念した。煙がJに流入したが、Kは避難誘導の機会を逸し、救助袋も使えなかった。その結果、118名が死亡し、42名が負傷した。

争点

  • 法令上の義務がない措置について、刑法上の注意義務を認めることができるか
  • デパートの防火管理者(管理課長)に、防火区画シャッター閉鎖・工事立会い・通報体制を整える注意義務があるか
  • キャバレーの防火管理者(支配人)に、階下出火を想定した避難誘導訓練を平素から実施しておく注意義務があるか
  • 管理権原者(代表取締役)に、防火管理者の業務を具体的に監督すべき注意義務があるか

判旨

上告棄却。3名全員に業務上過失致死傷罪(刑法211条)が成立する。

  • G(デパートの防火管理者):閉店後のデパートでは火災が容易に拡大するおそれがあった。そのため、Cには法令上の規定の有無を問わず、火災の拡大を防止するため可能な限り種々の措置を講ずべき注意義務があった。Gは、自らの権限により、または上司の指示を求めて、次の措置を採るべき立場にあった。
  • 工事中の3階の防火区画シャッター等を可能な範囲で閉鎖する
  • 保安係員等を工事に立ち会わせる
  • 出火時にJへ連絡する体制を採る
  • K(Jの防火管理者):建物の高層部で多数の遊興客を扱う店舗の防火管理者として、階下で火災が発生した場合に適切に避難誘導できるよう、平素から避難誘導訓練を実施しておくべき注意義務を負う。保安係員が通報を失念した事情を考慮しても、Kの過失は明らかである。
  • I(Jの管理権原者):防火管理者が防火管理業務を適切に実施しているかを具体的に監督すべき注意義務を負う。Iはこれを怠った。

判決文から

「Cとしては、火災の拡大を防止するため、法令上の規定の有無を問わず、可能な限り種々の措置を講ずべき注意義務があったことは、明らかである」

注意義務は法令上の義務に限られないことを示す

「自らの権限により、あるいは上司である管理部次長のHの指示を求め、工事が行われる本件ビル三階の防火区画シャッター等を可能な範囲で閉鎖し、保安係員又はこれに代わる者を立ち会わせる措置を採るべき注意義務を履行すべき立場にあった」

中間管理者にも、上司の指示を求める形で義務を課した

「被告人Kは、建物の高層部で多数の遊興客等を扱う「J」の防火管理者として、本件ビルの階下において火災が発生した場合、適切に客等を避難誘導できるように、平素から避難誘導訓練を実施しておくべき注意義務を負っていたというべきである」

防火管理者の平素の体制確立義務(管理過失)

「保安係員らがいずれも「J」に火災の発生を通報することを全く失念していたという事情を考慮しても、右注意義務を怠った被告人Kの過失は明らかである」

他者の落ち度があっても過失は否定されない

「管理権原者として、防火管理者である被告人Kが右の防火管理業務を適切に実施しているかどうかを具体的に監督すべき注意義務を果たしていなかったのであるから、この点の被告人Iの過失は明らかである」

管理権原者の監督過失を肯定した部分

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。