「君が代」ピアノ伴奏拒否事件
入学式の君が代ピアノ伴奏を音楽専科教諭に命じる職務命令は、憲法19条に違反しないとした判例
出題:司法H28・司法H29・司法R3・司法R7・予備H29・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成16(行ツ)328 戒告処分取消請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第61巻1号291頁
- 参照法条
- 憲法15条2項,憲法19条,地方公務員法30条,地方公務員法32条,学校教育法18条2号,旧小学校学習指導要領(平成元年文部省告示第24号。平成10年文部省告示第175号による改正前のもの)第4章第2D(1),旧小学校学習指導要領(平成元年文部省告示第24号。平成10年文部省告示第175号による改正前のもの)第4章第3の3
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
市立小学校の校長が音楽専科の教諭に対し入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うよう命じた職務命令が憲法19条に違反しないとされた事例
裁判要旨
市立小学校の校長が職務命令として音楽専科の教諭に対し入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うよう命じた場合において,(1)上記職務命令は「君が代」が過去の我が国において果たした役割に係わる同教諭の歴史観ないし世界観自体を直ちに否定するものとは認められないこと,(2)入学式の国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をする行為は,音楽専科の教諭等にとって通常想定され期待されるものであり,当該教諭等が特定の思想を有するということを外部に表明する行為であると評価することは困難であって,前記職務命令は前記教諭に対し特定の思想を持つことを強制したりこれを禁止したりするものではないこと,(3)前記教諭は地方公務員として法令等や上司の職務上の命令に従わなければならない立場にあり,前記職務命令は,小学校教育の目標や入学式等の意義,在り方を定めた関係諸規定の趣旨にかなうものであるなど,その目的及び内容が不合理であるとはいえないことなど判示の事情の下では,前記職務命令は,前記教諭の思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するということはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)
解説
事案
日野市立A小学校の音楽専科の教諭Xは、平成11年4月に同校へ着任した。同校では平成7年以降、卒業式・入学式で、音楽専科教諭のピアノ伴奏により「君が代」を斉唱してきた。校長は、同月6日の入学式でも同じ方式で国歌斉唱を行うこととした。
前日の職員会議で、Xは、思想・信条上も音楽教師としても伴奏はできないと述べた。校長が伴奏を命じたがXは応じず、当日朝に校長室で改めて命じられても拒否した(本件職務命令)。式で司会者が「国歌斉唱」と告げても、Xはピアノの椅子に座ったままであった。校長は5〜10秒待った後、用意していた録音テープで伴奏させ、国歌斉唱が行われた。
処分行政庁は、職務命令違反が地方公務員法32条・33条に違反するとして、同法29条1項1号〜3号に基づきXを戒告処分にした。Xは、本件職務命令は憲法19条に違反するなどとして、処分の取消しを求めた。
争点
- 入学式の国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を命じる校長の職務命令が、音楽専科教諭の思想及び良心の自由(憲法19条)を侵すか
判旨
上告棄却。本件職務命令は憲法19条に違反しない。判断の要素は次の3点である。
- 歴史観・世界観それ自体の否定か:伴奏拒否は、Xにとっては歴史観・世界観に基づく一つの選択ではある。しかし一般的には、それと不可分に結び付くものではない。したがって職務命令は、歴史観・世界観それ自体を直ちに否定するものではない。
- 外部表明性・強制の有無:入学式で君が代を伴奏する行為は、客観的に見て音楽専科教諭等に通常想定され期待されるものである。特定の思想を外部に表明する行為とは評価し難く、職務命令に従って行う場合はなおさらである。職務命令は、特定の思想の強制・禁止、思想の有無の告白の強要、児童への一方的な思想の教え込みの強制のいずれにも当たらない。
- 目的・内容の合理性:Xは地方公務員として、法令等や上司の職務命令に従う立場にある(憲法15条2項、地方公務員法30条・32条)。職務命令は学校教育法18条2号や学習指導要領の趣旨にかない、従来の慣行にも沿う。その目的・内容は不合理とはいえない。
判決文から
「上告人に対して本件入学式の国歌斉唱の際にピアノ伴奏を求めることを内容とする本件職務命令が,直ちに上告人の有する上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものと認めることはできないというべきである。」
歴史観・世界観それ自体の否定にはならないとした第1の柱
「客観的に見て,入学式の国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をするという行為自体は,音楽専科の教諭等にとって通常想定され期待されるものであって」
伴奏行為の職務性を客観的に評価した部分
「特定の思想を持つことを強制したり,あるいはこれを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものでもなく,児童に対して一方的な思想や理念を教え込むことを強制するものとみることもできない。」
19条侵害の類型にいずれも当たらないとした部分
「本件職務命令は,その目的及び内容において不合理であるということはできないというべきである。」
公務員の地位を踏まえた目的・内容の合理性判断
「入学式においてピアノ伴奏をすることは,自らの信条に照らし上告人にとって極めて苦痛なことであり,それにもかかわらずこれを強制することが許されるかどうかという点にこそあるように思われる。」
藤田反対意見による問題の捉え直し
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
