受刑者の信書発信不許可事件
受刑者の親族以外への信書発受の制限には障害発生の「相当のがい然性」が必要とし、新聞社宛て信書の不許可を国賠法上違法とした判例
出題:司法H22・司法H26・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成15(オ)422 損害賠償請求事件
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 集民 第219号947頁
- 参照法条
- (1,2につき) 監獄法46条2項 (1につき) 憲法14条1項,憲法21条 (2につき) 国家賠償法1条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 監獄法46条2項と憲法21条,14条1項 2 刑務所長が受刑者の新聞社あての信書の発信を不許可としたことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
裁判要旨
1 監獄法46条2項は,具体的事情の下で,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められるときに限り,この障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ上記信書の発受の制限が許されることを定めたものとして,憲法21条,14条1項に違反しない。 2 刑務所長が受刑者の新聞社あての信書の発信を不許可としたことは,刑務所長が,具体的事情の下で,上記信書の発信を許すことにより刑務所内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるかどうかについて考慮していないこと,上記信書が,国会議員に対して送付済みの請願書等の取材等を求める旨の内容を記載したものであり,その発信を許すことによって刑務所内に上記の障害が生ずる相当のがい然性があるということができないことなど判示の事情の下においては,裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
解説
事案
Xは現住建造物等放火等の罪で懲役18年の刑が確定し、熊本刑務所で服役していた。Xは平成11年6月、参議院議員と衆議院議員に「受刑者処遇の在り方の改善のための獄中からの請願書」を送付した。同年10月には、熊本地方検察庁に刑務所職員等についての告訴告発状を送付した。
その後Xは、これらの内容について取材・調査・報道を求める内容のC新聞社宛ての手紙(本件信書)を発信したいとして、刑務所長に許可を求めた。刑務所長は、親族でない者との信書の発受は「特に必要があると認められる場合に限って」許されると解した。そのうえで、本件信書は権利救済・不服申立て等のためのものではなく必要性もないとして、発信を不許可とした。
Xは国(Y)に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料を請求した。原審は、本件信書の発信が権利救済や教化改善のために特に必要とは認められないとして、請求を棄却した。最高裁はこれを破棄して自判し、慰謝料1万円の限度で請求を認容した。
争点
- 監獄法46条2項(受刑者の親族でない者との信書発受の制限)は憲法21条・14条1項に違反するか
- 同項に基づく信書発信の制限はどのような要件・範囲で許されるか
- 本件の発信不許可は裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法1条1項の適用上違法か(過失の有無を含む)
判旨
規範:憲法21条の趣旨・目的に照らすと、受刑者の親族でない者との信書の発受を制限できるのは、次の場合に限られる。
- 受刑者の性向、行状、監獄内の管理・保安の状況、当該信書の内容その他の具体的事情の下で、これを許すと、監獄内の規律及び秩序の維持、受刑者の身柄の確保、受刑者の改善・更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合
- その場合でも、制限の程度は障害発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまる
監獄法46条2項は、文言上は「特に必要がある場合に限り許す」ようにみえる。しかし、上記の要件・範囲でのみ制限を許す趣旨と解すべきであり、そう解する限り憲法21条・14条1項に違反しない。
あてはめ:刑務所長は上記の障害発生の相当のがい然性を考慮せずに不許可とした。しかも本件信書は送付済みの請願書等の取材を求めるもので、障害発生の相当のがい然性がないことも明らかである。よって本件不許可は裁量権の逸脱・濫用であり、監獄法46条2項の適用上違法であるのみならず、国家賠償法1条1項の適用上も違法である。過失も肯定され、慰謝料は1万円とされた。
判決文から
「放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って,これを制限することが許されるものというべきであり」
制限の要件=相当のがい然性基準
「その制限の程度は,上記の障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当である。」
制限の程度は必要かつ合理的な範囲に限定
「その文言上は,特に必要があると認められる場合に限って上記信書の発受を許すものとしているようにみられるけれども,上記信書の発受の必要性は広く認められ,上記要件及び範囲でのみその制限が許されることを定めたものと解するのが相当であり」
文言を限定解釈して合憲とした部分
「熊本刑務所長の本件信書の発信の不許可は,裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものとして監獄法46条2項の規定の適用上違法であるのみならず,国家賠償法1条1項の規定の適用上も違法というべきである。」
適用違法と国賠違法を結論づけた部分
「本件信書の発信によって生ずる障害の有無を何ら考慮することなく本件信書の発信を不許可としたのであるから,熊本刑務所長に過失があることも明らかというべきである。」
考慮不尽から過失を肯定
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
