呉市教研集会事件
学校施設の目的外使用許可は管理者の裁量に委ねられるとしつつ、判断過程を審査し、教研集会への使用不許可を裁量権逸脱とした判例
出題:司法H22・司法H23・予備R4・予備R5
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成15(受)2001 損害賠償請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第60巻2号401頁
- 参照法条
- (1〜4につき) 学校教育法85条 (1,3,4につき) 地方自治法238条4項,地方自治法238条の4第4項,学校施設の確保に関する政令3条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条2号 (2,4につき) 国家賠償法1条1項,行政事件訴訟法30条 (4につき)呉市立学校施設使用規則(昭和40年呉市教育委員会規則第4号)2条,呉市立学校施設使用規則(昭和40年呉市教育委員会規則第4号)4条,呉市立学校施設使用規則(昭和40年呉市教育委員会規則第4号)5条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 公立学校施設の目的外使用の許否の判断と管理者の裁量権 2 学校教育法85条に定める学校教育上の支障の意義 3 公立学校施設の目的外使用の許否の判断の適否に関する司法審査の方法 4 公立小中学校等の教職員の職員団体が教育研究集会の会場として市立中学校の学校施設を使用することを不許可とした市教育委員会の処分が裁量権を逸脱したものであるとされた事例
裁判要旨
1 公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として,管理者の裁量にゆだねられており,学校教育上支障がない場合であっても,行政財産である学校施設の目的及び用途と当該使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。 2 学校教育法85条に定める学校教育上の支障がある場合とは,物理的支障がある場合に限られるものではなく,教育的配慮の観点から,児童,生徒に対し精神的悪影響を与え,学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ,現在の具体的な支障がある場合だけでなく,将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる。 3 公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かの管理者の判断の適否に関する司法審査は,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものである。 4 公立小中学校等の教職員によって組織された職員団体がその主催する教育研究集会の会場として市立中学校の学校施設を使用することの許可を申請したのに対し,市教育委員会が同中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き,児童生徒に教育上悪影響を与え,学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由でこれを不許可とする処分をした場合につき,(1)教育研究集会は,上記職員団体の労働運動としての側面も強く有するものの,教員らによる自主的研修としての側面をも有していること,(2)前年の第48次教育研究集会まで1回を除いてすべて学校施設が会場として使用されてきていたこと,(3)上記申請に係る集会について右翼団体等による具体的な妨害の動きがあったことは認められず,上記集会の予定された日は休校日である土曜日と日曜日であったこと,(4)教育研究集会の要綱などの刊行物に学習指導要領等に対して批判的な内容の記載は存在するが,いずれも抽象的な表現にとどまり,それらが自主的研修の側面を大きくしのぐほどに中心的な討議対象となるものとまでは認められないこと,(5)当該集会の中でも学校教科項目の研究討議を行う分科会の場として学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで利便性に大きな差違があることは否定できないこと,(6)当該中学校の校長が職員会議を開いた上で支障がないとし,いったんは口頭で使用を許可する意思を表示した後に,市教育委員会が過去の右翼団体の妨害行動を例に挙げて使用させない方向に指導し,不許可処分をするに至ったことなど判示の事情の下においては,上記不許可処分は裁量権を逸脱したものである。
解説
事案
広島県の公立小中学校等の教職員で組織された職員団体Xは、第49次教育研究集会(平成11年11月13日(土)・14日(日))の会場として、呉市立中学校の体育館等の使用を校長に口頭で申し込んだ。校長は職員会議で異議がなかったため、差し支えないと回答した。
ところが市教委の教育長がこれを知って校長を呼び出し、過去に教研集会の会場へ右翼団体の街宣車が押し掛けて周辺住民から苦情が出たことを挙げて、使用を差し控えるよう求めた。校長もこれに従い、使用を認められない旨をXに連絡した。その後Xが申請書を提出したが、市教委は呉市立学校施設使用規則5条1号・3号に該当するとして不許可処分をした。理由は、学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるというものであった。
集会は結局、市内外の七つの公共施設で開催された。Xの教研集会は第16次を除き第48次まで学校施設で開かれており、広島県で不許可とされたのは本件が初めてであった。Xは国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求した。原審は不許可処分を裁量権逸脱で違法と判断し、市が上告受理申立てをした。
争点
- 公立学校施設の目的外使用許可(地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条)は管理者の裁量に委ねられるか
- 学校教育法85条の「学校教育上支障」の意義
- 目的外使用の許否判断に対する司法審査の方法
- 本件不許可処分は裁量権の逸脱・濫用に当たるか(従前の許可運用の位置づけを含む)
判旨
上告棄却。本件不許可処分は裁量権を逸脱し違法であるとした原審の判断を、結論において是認した。
- 裁量の有無:学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として管理者の裁量に委ねられる。学校教育上の支障がなくても当然に許可すべきものではなく、行政財産である学校施設の目的・用途と使用の目的・態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により不許可とすることもできる。
- 学校教育上の支障:物理的支障に限られない。教育的配慮の観点から児童・生徒に精神的悪影響を与え、学校の教育方針にもとる場合も含む。現在の具体的支障だけでなく、将来の支障のおそれが明白に認められる場合も含む。
- 審査方法:裁量権の行使であることを前提に、判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討する。判断が重要な事実の基礎を欠くか、社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に限り、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。
- あてはめ:本件処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど考慮事項の評価が明らかに合理性を欠いている。他方で当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、社会通念に照らし著しく妥当性を欠く。
判決文から
「学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として,管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」
目的外使用許可の裁量性を正面から肯定
「そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく」
支障なし=許可義務ではない点
「その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきもの」
判断過程審査を組み込んだ審査基準
「従前,同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても,そのことから直ちに,従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。」
従前運用の拘束力を否定(考慮要素にとどまる)
「重視すべきでない考慮要素を重視するなど,考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており,他方,当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」
過大考慮・考慮不尽から違法を導く結論部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
