最決平成18年2月14日
窃取した他人名義のクレジットカード情報をネットで入力して電子マネーを取得した行為に、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)の成立を認めた。
出題:司法H26・司法H30・司法R4・司法R7・予備H30・予備R4
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成17(あ)1601 強姦,恐喝,窃盗,電子計算機使用詐欺被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第60巻2号165頁
- 参照法条
- 刑法246条の2
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
窃取したクレジットカードの名義人氏名等を冒用してこれらをクレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に入力送信して電子マネーの利用権を取得した行為が電子計算機使用詐欺罪に当たるとされた事例
裁判要旨
窃取したクレジットカードの名義人氏名,番号等を冒用して,これらを,インターネットを介し,クレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え,その購入に関する不実の電磁的記録を作成し,電子マネーの利用権を取得した行為は,電子計算機使用詐欺罪に当たる。
解説
事案
被告人は、窃取したクレジットカードの番号等を冒用し、電子マネーを不正に取得しようと考えた。この電子マネーは、出会い系サイトの携帯電話によるメール情報受送信サービスを利用する際の決済手段として使われるものである。
被告人は5回にわたり、携帯電話機からインターネットを介して、クレジットカード決済代行業者が電子マネー販売等の事務処理に使う電子計算機に、カードの名義人氏名・番号・有効期限を入力送信した。そのうえで、同カードで代金を支払う方法による電子マネーの購入を申し込んだ。
その結果、電子計算機に接続されたハードディスクに「名義人が同カードで販売価格合計11万3000円相当の電子マネーを購入した」とする電磁的記録が作られ、被告人は同額相当の電子マネーの利用権を取得した。
第1審・原審(大阪高裁)は電子計算機使用詐欺罪の成立を認めた。上告に対し、最高裁は上告理由に当たらないとしたうえで、同罪の成否につき職権で判断した。
争点
- 他人名義のクレジットカード情報(真正な番号等)を冒用して入力送信することが、刑法246条の2前段の「虚偽の情報」を与えることに当たるか
- 名義人が電子マネーを購入したとする記録が「財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録」に当たるか
- 電子マネーの利用権の取得が「財産上不法の利益」の取得に当たるか
判旨
結論:電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2前段)が成立する。上告棄却。
規範(答案用):
- カード名義人による購入の申込みがないのに、名義人のカード番号等を入力送信して「名義人本人が購入を申し込んだ」とする情報を与えることは、「虚偽の情報」を与えることに当たる。
- それにより作られる「名義人本人が購入した」とする記録は、「財産権の得喪に係る不実の電磁的記録」に当たる。
- その結果取得した電子マネーの利用権は、「財産上不法の利益」に当たる。
入力されたカード番号等それ自体は真正である。しかし、決済システムの事務処理にとって重要な「名義人本人による申込み」という点が事実に反する。そのため、送信された情報は虚偽と評価される。
判決文から
「本件クレジットカードの名義人による電子マネーの購入の申込みがないにもかかわらず,本件電子計算機に同カードに係る番号等を入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え」
なりすまし入力を「虚偽の情報」とした核心部分
「名義人本人がこれを購入したとする財産権の得喪に係る不実の電磁的記録を作り,電子マネーの利用権を取得して財産上不法の利益を得たものというべきであるから」
不実の電磁的記録と財産上の利益の当てはめ
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