NHK記者証言拒絶事件
報道関係者の取材源は民訴法197条1項3号の「職業の秘密」に当たり、比較衡量により原則として証言拒絶できるとした決定
出題:司法H22・司法H27・司法R3・司法R4・司法R6・予備H28・予備H30・予備R4・予備R5・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成18(許)19 証拠調べ共助事件における証人の証言拒絶についての決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 民集 第60巻8号2647頁
- 参照法条
- (1,2につき)民訴法197条1項3号,憲法21条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができるかどうかを判断する基準 2 民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができる場合
裁判要旨
1 民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきである。 2 民事事件において証人となった報道関係者は,当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段,方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,民訴法197条1項3号に基づき,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができる。
解説
事案
健康・美容アロエ製品を製造・販売する企業グループの日本における販売会社A社について、NHKは平成9年10月9日のニュースで、A社が原材料費の水増しにより77億円余りの所得を隠し、追徴課税を受けたなどと報道した。主要各紙や米国内でも同様の報道がされた。
A社の米国関連会社など(抗告人ら)は、米国国税当局の職員が日米同時税務調査の過程で、虚偽を含む徴税情報を国税庁の税務官に無権限で開示し、それが情報源となって報道がされ、株価下落等の損害を受けたと主張した。そして、米国を被告としてアリゾナ州地区連邦地方裁判所に損害賠償訴訟(本件基本事件)を提起した。
同裁判所は開示(ディスカバリー)手続の中で、国際司法共助により、取材を担当したNHK記者(相手方)の証人尋問を日本の裁判所に嘱託した。新潟地裁での尋問で、記者は取材源の特定に関する質問について、職業の秘密を理由に証言を拒絶した。原々審・原審はいずれも拒絶に正当な理由があるとし、抗告人らが許可抗告した。
争点
- 報道関係者の取材源は民訴法197条1項3号の「職業の秘密」に当たるか
- 職業の秘密に当たれば直ちに証言拒絶が認められるか(保護に値する秘密の判断基準)
- 取材源に係る証言拒絶が原則として認められる場合はどのような場合か
- 取材の自由・取材源の秘密の憲法21条上の位置づけ
判旨
抗告棄却。記者の証言拒絶には正当な理由がある。
- 職業の秘密の意義:その事項が公開されると、当該職業に深刻な影響を与え、以後その遂行が困難になるものをいう。
- 取材源の秘密:職業の秘密に当たる。
- 保護に値する秘密に限られる:職業の秘密に当たっても直ちに証言拒絶できるわけではない。保護に値する秘密に限って拒絶でき、その判断は、秘密の公表によって生ずる不利益と、証言拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量による。
- 取材源についての考慮事情:報道の内容・性質・社会的意義・価値、取材の態様、将来の同種取材が妨げられる不利益の内容・程度等と、民事事件の内容・性質・社会的意義・価値、証言の必要性の程度、代替証拠の有無等を比較衡量する。
- 原則として拒絶できる場合:次の事情がいずれも認められなければ、取材源の秘密は保護に値し、原則として証言を拒絶できる。
- 報道が公共の利益に関するものでない
- 取材の手段・方法が一般の刑罰法令に触れる、または取材源が開示を承諾している
- 社会的意義や影響のある重大な民事事件で、公正な裁判のため当該証言が必要不可欠である
判決文から
「ここにいう「職業の秘密」とは,その事項が公開されると,当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解される」
職業の秘密の定義(平成12年決定を引用)
「保護に値する秘密であるかどうかは,秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるというべきである。」
職業の秘密一般に妥当する比較衡量の規範
「取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。」
取材源が197条1項3号に該当すると明言
「報道のための取材の自由も,憲法21条の精神に照らし,十分尊重に値するものといわなければならない」
取材の自由の憲法上の位置づけ(博多駅事件を踏襲)
「取材源の秘密は,取材の自由を確保するために必要なものとして,重要な社会的価値を有するというべきである。」
取材源秘匿を重く見て原則拒絶を導く根拠
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
