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在外日本人選挙権訴訟(在外邦人選挙権制限違憲訴訟)

最大判平成17年9月14日

在外国民の選挙権行使の制限を違憲とし、当事者訴訟による地位確認と立法不作為の国家賠償を認めた大法廷判決

憲法参政権・国務請求権違憲審査制・憲法訴訟当事者訴訟・民衆訴訟本試験で 28 問(短答 27・論文 1)

出題:司法H22・司法H23・司法H26・司法H27・司法H28・司法H29・司法R3・司法R4・司法R5・司法R6・司法R7・予備H23・予備H27・予備H28・予備H29・予備R5・予備R6・予備R7

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
平成13(行ツ)82 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件
裁判
判決・その他
判例集
民集 第59巻7号2087頁
参照法条
憲法15条1項,憲法15条3項,憲法41条,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法第4章の2 在外選挙人名簿,公職選挙法42条,公職選挙法49条の2,公職選挙法附則8項,公職選挙法(平成12年法律第62号による改正前のもの)21条1項,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)42条,住民基本台帳法15条1項,行政事件訴訟法4条,国家賠償法1条1項

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

1 公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が在外国民の国政選挙における投票を平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時全く認めていなかったことと憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書 2 公職選挙法附則8項の規定のうち在外国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分と憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書 3 在外国民が次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えの適否 4 在外国民と次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において投票をすることができる地位 5 国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける場合 6 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙までに国会が在外国民の国政選挙における投票を可能にするための立法措置を執らなかったことについて国家賠償請求が認容された事例

裁判要旨

1 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が国政選挙において投票をするのを全く認めていなかったことは,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。 2 公職選挙法附則8項の規定のうち,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は,遅くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点においては,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。 3 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法である。 4 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民は,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録され ていることに基づいて投票をすることができる地位にある。 5 国会議員の立法行為又は立法不作為は,その立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受ける。 6 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権行使の機会を確保するためには,上記国民に上記選挙権の行使を認める制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠であったにもかかわらず,上記国民の国政選挙における投票を可能にするための法律案が廃案となった後,平成8年10月20日の衆議院議員総選挙の施行に至るまで10年以上の長きにわたって国会が上記投票を可能にするための立法措置を執らなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものというべきであり,国は,上記選挙において投票をすることができなかったことにより精神的苦痛を被った上記国民に対し,慰謝料各5000円の支払義務を負う。 (1,2,4〜6につき,補足意見,反対意見がある。)

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

国外に居住し、国内の市町村に住所を有しない日本国民(在外国民)は住民基本台帳に記録されないため、選挙人名簿に登録されなかった(平成10年改正前公職選挙法42条1項、21条1項)。その結果、国政選挙で投票できなかった。昭和59年、内閣は在外選挙制度の創設を内容とする法律案を国会に提出したが、実質的な審議がされないまま昭和61年の衆議院解散により廃案となった。その後も立法はされず、在外国民は平成8年10月20日の衆議院総選挙(本件選挙)で投票できなかった。

平成10年改正で在外選挙人名簿が創設された。しかし、公職選挙法附則8項により、対象は当分の間、両議院の比例代表選出議員の選挙に限られた。

在外国民であるXらは、国に対し次の請求をした。

  • 主位的請求:改正前法・改正後法が違法であることの確認
  • 予備的請求:衆議院小選挙区選挙・参議院選挙区選挙で選挙権を行使する権利を有することの確認
  • 国家賠償請求:本件選挙で投票できなかったことによる損害として1人5万円(帰国者も原告に含む)

原審は、確認の訴えをいずれも法律上の争訟に当たらないとして却下し、国家賠償請求を棄却した。

争点

  • 在外国民の選挙権行使を制限することの合憲性と、その審査基準
  • 改正前公職選挙法が在外国民の投票を全く認めていなかったことの合憲性
  • 公職選挙法附則8項が、在外選挙の対象を比例代表選挙に限定した部分の合憲性
  • 違法確認の訴え・地位確認の訴えの適法性(確認の利益、公法上の当事者訴訟)
  • 国会議員の立法行為・立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合
  • 本件立法不作為による国家賠償請求の可否と損害額

判旨

規範(選挙権の制限)

  • 選挙権またはその行使の制限は、原則として許されない。
  • 制限には「やむを得ないと認められる事由」が必要である。
  • その事由があるといえるのは、制限なしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが「事実上不能ないし著しく困難」な場合に限られる。
  • これを欠く制限は、憲法15条1項・3項、43条1項、44条ただし書に違反する。所要の措置を執らない不作為の場合も同様である。

結論(合憲性)

  • 改正前法が本件選挙当時、在外国民の投票を全く認めていなかったことは違憲である。
  • 附則8項の限定部分は、遅くとも本判決言渡し後初めて行われる総選挙・通常選挙の時点で違憲である。

確認の訴え

  • 違法確認の訴えは不適法として却下された。
  • 次回選挙の小選挙区・選挙区選挙において、在外選挙人名簿への登録に基づき投票できる地位の確認は、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法であり、認容された。

国家賠償(規範)
立法行為・立法不作為は、次のような場合には、例外的に国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

  • 立法内容・立法不作為が憲法上の権利を違法に侵害することが明白な場合
  • 権利行使の機会確保に所要の立法措置が必要不可欠で、それが明白であるのに、国会が正当な理由なく長期にわたりこれを怠る場合など

本件はこれに当たるとされ、慰謝料各5000円が認容された。

判決文から

「国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない」

選挙権制限の厳格な審査基準の核心

「そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り,上記のやむを得ない事由があるとはいえず」

「やむを得ない事由」の具体的な判断基準

「このことは,国が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執らないという不作為によって国民が選挙権を行使することができない場合についても,同様である」

不作為による制限にも同じ基準が及ぶ

「選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものである」

事前の確認訴訟に確認の利益を認める根拠

「当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり」

違憲性と国賠法上の違法性の区別

「国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合など」

立法不作為が国賠法上違法となる例外の類型

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。