面会接見事件
検察庁舎内に接見設備がなければ接見を拒否できるが、即時接見の必要があれば面会接見について特別の配慮をする義務がある
出題:司法H22・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成12(受)243 国家賠償請求上告,同附帯上告事件
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第59巻3号563頁
- 参照法条
- 刑訴法39条,国家賠償法1条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官が同庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として接見の申出を拒否することができる場合 2 検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず弁護人が同庁舎内における即時の接見を求め即時に接見をする必要性が認められる場合に検察官が執るべき措置 3 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官が同庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として接見の申出を拒否するに際し立会人の居る部屋でのごく短時間の「接見」であっても差し支えないかどうかなどの点についての弁護人の意向を確かめることをせず上記申出に対して何らの配慮もしなかったことが違法とされた事例
裁判要旨
1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官は,同庁舎内に,その本来の用途,設備内容等からみて,検察官が,その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ,また,その部屋等を接見のために用いても,被疑者の逃亡,罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋等が存しない場合には,接見の申出を拒否することができる。 2 検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず,弁護人がなお同庁舎内における即時の接見を求め,即時に接見をする必要性が認められる場合には,検察官には,捜査に顕著な支障が生ずる場合でない限り,秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の「接見」(面会接見)であってもよいかどうかという点につき,弁護人の意向を確かめ,弁護人がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは,面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある。 3 弁護人が,検察官から,検察庁の庁舎内には接見のための設備が無いことを理由に同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否されたのに対し,接見の場所は被疑者が現在待機中の部屋でもよいし,検察官の執務室でもよいなどと述べて,即時の接見を求めたこと,弁護人は,勾留場所が代用監獄から少年鑑別所に変更されたことをできる限り早く被疑者に伝えて元気づけようと考え,接見を急いでいたこと,ごく短時間の接見であれば,これを認めても捜査に顕著な支障が生ずるおそれがあったとまではいえないことなど判示の事情の下においては,検察官が,立会人の居る部屋でのごく短時間の「接見」(面会接見)であっても差し支えないかどうかなどの点についての弁護人の意向を確かめることをせず,上記申出に対して何らの配慮もしなかったことは,違法である。
解説
事案
非現住建造物等放火の被疑事実で逮捕・勾留された当時17歳の被疑者について、弁護人X(被上告人)は準抗告を申し立て、勾留場所が代用監獄から少年鑑別所に変更された。
- 拒否(1):Xは同日、被疑者が取調べのため広島地検で待機中と知り、変更をすぐ伝えて元気づけようと、庁舎内での即時接見を申し出た。待機中の部屋でも検事の執務室でもよいと述べたが、D検事は庁舎内に接見設備がないことを理由に拒否し、何の配慮もしなかった。取調べ開始まで約40分あった。
- 拒否(2):被疑者は処分保留で釈放後、別の現住建造物等放火で再逮捕された。Xは弁護人選任届の受領と黙秘権の再教示のため、地検で接見を申し出たが、同様の理由で拒否された。弁解録取は約1時間40分後で、その後押送まで4時間近く待機時間があった。
Xは国賠法1条1項に基づき慰謝料を請求した。原審は、同行室を利用した接見をさせるべきだったとして一部認容した。
争点
- 検察庁舎内に接見設備がないことを理由に、検察官は弁護人の接見申出を拒否できるか(その基準)
- 設備がないとして拒否した後も弁護人が即時接見を求める場合、検察官はどのような措置を執るべきか
- 面会接見への配慮を怠ったことが違法とされる場合に、検察官に国賠法上の過失があるか
判旨
原判決中の国敗訴部分を破棄し、請求を棄却した。
- 規範1(拒否の可否):庁舎内に、立会人なしの接見を認めても逃亡・罪証隠滅を防止でき、戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等がなければ、接見申出を拒否しても違法ではない。その部屋等は接見専用設備に限られない。ただし、本来の用途・設備内容等からみて、検察官が接見に用い得ることを容易に想到でき、かつ逃亡・罪証隠滅・戒護上の問題が生じないことを容易に判断し得る部屋等でなければならない。
- 規範2(特別の配慮義務):拒否後も弁護人等が庁舎内での即時接見を求め、即時接見の必要性が認められる場合には、捜査に顕著な支障が生ずる場合を除き、検察官は次の義務を負う。秘密交通権が十分に保障されない態様の短時間の「接見」(面会接見)でもよいかについて弁護人等の意向を確かめ、差し支えないとの意向が示されれば面会接見ができるよう特別の配慮をする。これを怠り何らの措置も執らない不作為は違法となる。
- あてはめ:拒否(1)(2)はそれ自体直ちに違法とはいえない。しかし各場面で、検察官が面会接見について弁護人の意向を確かめず、何らの配慮もしなかったことは、いずれも違法である。しかし当時は基準が確立しておらず無理からぬ面があるから、過失は否定される。
判決文から
「検察庁の庁舎内において,弁護人等と被疑者との立会人なしの接見を認めても,被疑者の逃亡や罪証の隠滅を防止することができ,戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等が存在しない場合には,上記の申出を拒否したとしても,これを違法ということはできない。」
設備不存在を理由とする拒否を適法とする規範
「その本来の用途,設備内容等からみて,接見の申出を受けた検察官が,その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ」
「部屋等」の判断基準=容易に想到・判断できるか
「弁護人等がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは,面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務があると解するのが相当である。」
面会接見に関する特別の配慮義務の核心
「検察官が,上記のような即時に接見をする必要性の認められる接見の申出に対し,上記のような特別の配慮をすることを怠り,何らの措置を執らなかったときは,検察官の当該不作為は違法になると解すべきである。」
配慮義務違反の不作為が違法となること
「D検事が上記の配慮義務を怠ったことには,当時の状況の下において,無理からぬ面があることを否定することはできず,結局,同検事に過失があったとまではいえないというべきである。」
違法でも過失否定で国賠請求は棄却
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