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最判平成17年3月10日

競売妨害目的で権原の設定を受けた占有者にも抵当権に基づく妨害排除を認め、直接自己への明渡しを認めた。賃料相当損害は否定した。

民法物権総論・物権変動その他の担保物権抵当権本試験で 5 問(短答 5・論文 0)

出題:司法H22・司法H28・司法H30・司法R3・司法R5

裁判所
最高裁判所第一小法廷
事件番号
平成13(オ)656 建物明渡請求事件
裁判
判決・その他
判例集
民集 第59巻2号356頁
参照法条
民法369条,民法709条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

1 所有者から占有権原の設定を受けて抵当不動産を占有する者に対して抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる場合 2 抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり抵当権者が直接自己への抵当不動産の明渡しを請求することができる場合 3 第三者による抵当不動産の占有と抵当権者についての賃料額相当の損害の発生の有無

裁判要旨

1 抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても,抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり,その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができる。 2 抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,当該占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。 3 抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

X(被上告人)は、D社所有地上にホテル(本件建物)を建築したが、D社が請負代金の大部分を支払わなかったため、引渡しを留保していた。その後、請負残代金約17億円の担保として、本件建物と敷地にXのための抵当権と停止条件付賃借権(交換価値の確保が目的で、使用収益は目的としない)を設定し、登記・仮登記をした。あわせて「他に賃貸するにはXの承諾を要する」と合意し、Xは建物を引き渡した。

ところがD社は分割弁済を一切せず、Xの承諾なくE商事に5年の期間で賃貸した。賃料は後に月額100万円に減額され、敷金は1億円に増額された。E商事も無断でY(上告人)に、賃料月額100万円・保証金1億円で転貸した。適正賃料は月額約600万円であった。YとE商事の代表者は同一人であり、D社の代表者はYの取締役だった時期がある。

Xが競売を申し立てたが売却の見込みは立たず、その中でD社の代表者は、敷地の抵当権を100万円と引換えに放棄するようXに要求した。Xは抵当権に基づく明渡しと、抵当権侵害による賃料相当損害金を請求し、原審はいずれも認容した。

争点

  • 所有者から占有権原の設定を受けた占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求ができるか
  • 抵当権者が直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるか
  • 第三者の占有により、抵当権者に賃料額相当の損害が生じるか

判旨

明渡請求は結論において是認された。損害金請求については原判決を破棄し、請求を棄却した。

  • 規範1(妨害排除):抵当権設定登記後に所有者から占有権原の設定を受けた占有者でも、次の2つを満たせば、抵当権者は抵当権に基づく妨害排除請求として、その状態の排除を求めることができる。
  • その設定に競売手続を妨害する目的が認められること
  • その占有により交換価値の実現が妨げられ、優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があること
  • 規範2(直接明渡し):所有者において、抵当権侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は占有者に対し、直接自己への明渡しを求めることができる。
  • 規範3(損害):抵当権者は、第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではない。
  • 停止条件付賃借権の侵害を理由とする賃料相当損害金も否定された。その賃借権は使用収益を目的としないからである。

判決文から

「その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,」

権原ある占有者に対する妨害排除の要件

「抵当不動産の所有者は,抵当不動産を使用又は収益するに当たり,抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており,抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである。」

権原ある占有者にも及ぶ理由づけ

「抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」

直接自己への明渡しの要件

「抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではないというべきである。」

賃料相当損害金の否定

「抵当権者が抵当権に基づく妨害排除請求により取得する占有は,抵当不動産の所有者に代わり抵当不動産を維持管理することを目的とするものであって,抵当不動産の使用及びその使用による利益の取得を目的とするものではない」

抵当権者の占有は管理目的にとどまる

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。