支払督促正本騙取事件
送達報告書に受送達者名を書けば有印私文書偽造罪になる。廃棄目的で騙し取った支払督促正本には不法領得の意思がない。
出題:司法H27・司法R2・予備R2・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成16(あ)761 有印私文書偽造,同行使,詐欺,公正証書原本不実記載,同行使被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第58巻8号1005頁
- 参照法条
- 刑法159条1項,刑法161条1項,刑法246条1項,民訴法99条,民訴法109条,民訴法第7編督促手続,郵便法(平成14年法律第98号による改正前のもの)66条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人の氏名を冒書する行為と有印私文書偽造罪の成否 2 他人あての送達書類を廃棄するだけの意図で他人を装って受領する行為について詐欺罪における不法領得の意思が認められないとされた事例
裁判要旨
1 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は,同人名義の受領書を偽造したものとして,有印私文書偽造罪を構成する。 2 支払督促の債務者を装い郵便配達員を欺いて支払督促正本を受領することにより,送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ,債務者から督促異議申立ての機会を奪ったまま確定させて,その財産を差し押さえようとしたが,支払督促正本はそのまま廃棄するだけで外に何らかの用途に利用,処分する意思がなかったという判示の事実関係の下では,支払督促正本に対する詐欺罪における不法領得の意思を認めることはできない。
解説
事案
被告人は金に困り、支払督促制度を悪用して叔父の財産を不正に差し押さえようと考えた。そこで、叔父に対し6000万円を超える立替金債権があるとする内容虚偽の支払督促を申し立てた。狙いは、叔父あての支払督促正本と仮執行宣言付支払督促正本を共犯者が叔父になりすまして受け取り、適式に送達されたような外形を整えることにあった。そうすれば叔父に督促異議申立ての機会を与えないまま、支払督促の効力を確定させられる。
共犯者は2回にわたり、被告人から連絡を受けた日時ころに叔父方付近で待ち受けた。そして送達に来た郵便配達員に叔父の氏名を名乗り、郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に叔父の氏名を記載して提出し、支払督促正本等を受け取った。
被告人は当初から正本等を何かに利用するつもりはなく、速やかに廃棄する意図だった。現に、当日中に受け取った支払督促正本をすぐ廃棄している。
原判決は有印私文書偽造・同行使罪に加え、詐欺罪の成立も認めた。
争点
- 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に、受送達者本人の氏名を冒書する行為は有印私文書偽造罪を構成するか
- 廃棄するだけの意図で、受送達者になりすまして郵便配達員から支払督促正本等を受領した行為について、詐欺罪の不法領得の意思が認められるか
- 受領行為が財産的利得(差押え)を得る手段として行われた場合に、結論が変わるか
判旨
上告は棄却された。
- 文書偽造について:郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に、他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は、同人名義の受領書を偽造したものとして有印私文書偽造罪(刑法159条1項)を構成する。同行使罪(161条1項)も成立する。
- 詐欺罪について:郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等を、廃棄するだけで外に何らかの用途に利用・処分する意思がなかった場合、正本等に対する不法領得の意思は認められない。受領行為が財産的利得を得る手段の一つとして行われたときでも同じである。したがって、詐欺罪(246条1項)の成立を認めた原判決は法令の解釈適用を誤っている。
- 結論:ただし、有印私文書偽造・同行使罪は成立し、その余の犯行の罪質・量刑等にも照らすと、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとはいえない。
判決文から
「郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は,同人名義の受領書を偽造したものとして,有印私文書偽造罪を構成すると解するのが相当である」
受領書の名義人は受送達者本人だとして偽造を肯定
「郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について,廃棄するだけで外に何らかの用途に利用,処分する意思がなかった場合には,支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであり」
廃棄目的では利用処分意思を欠くとした核心部分
「このことは,郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つとして行ったときであっても異ならないと解するのが相当である。」
最終目的の財産的利得では補えないことを明示
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
