最決平成16年10月29日
死亡保険金は原則として特別受益に当たらない。ただし著しい不公平という特段の事情があれば民法903条類推で持戻しの対象となる
出題:司法H29・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成16(許)11 遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 民集 第58巻7号1979頁
- 参照法条
- 民法903条,商法673条,商法675条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
被相続人を保険契約者及び被保険者とし共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づく死亡保険金請求権と民法903条
裁判要旨
被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。
解説
事案
甲・乙夫婦が平成2年に相次いで死亡し、その子である抗告人ら3名と相手方が共同相続人となった。本件で分割の対象となったのは甲所有の土地(第1審の鑑定で合計1149万円)である。それ以外の遺産は分割協議・調停で既に分けられており、各人は約1200万〜1440万円相当を取得していた。
相手方は自宅を増築して甲乙を昭和56年ころから死亡まで住まわせ、痴呆状態の甲の介護を乙が行うのを手伝った。抗告人らは甲乙と同居していない。
相手方は次の死亡保険金等を受領した。
- 乙を保険契約者・被保険者、相手方を受取人とする養老保険2口(約500万円と約73万円)
- 甲を共済契約者、乙を被共済者、甲を共済金受取人とする養老生命共済の死亡共済金等(約219万円)
抗告人らは、これらが民法903条1項の特別受益に当たると主張した。原審はこれを否定し、土地を相手方の単独取得としたうえで、相手方に対し抗告人ら各自へ代償金287万2500円の支払を命じた。
争点
- 共同相続人の一部を受取人とする養老保険契約に基づく死亡保険金請求権は、民法903条1項の遺贈又は贈与に係る財産に当たるか
- 当たらないとしても、同条の類推適用により特別受益に準じて持戻しの対象となる場合があるか、その判断基準は何か
判旨
結論:抗告棄却。死亡保険金について持戻しを認めなかった原審の判断は、結論において是認できる。
規範
- 被相続人を保険契約者・被保険者とし、共同相続人の1人又は一部を受取人とする養老保険契約に基づく死亡保険金請求権(及びこれを行使して得た保険金)は、民法903条1項の遺贈又は贈与に係る財産に当たらない。
- ただし、保険金受取人である相続人と他の共同相続人との間に生ずる不公平が、同条の趣旨に照らし到底是認できないほど著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、同条の類推適用により特別受益に準じて持戻しの対象となる。
- 特段の事情の有無は、保険金の額、その額の遺産総額に対する比率、同居の有無や介護等への貢献の度合いなど受取人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等を総合考慮して判断する。
あてはめ
- 本件の養老保険2口については、特段の事情があるとまではいえない。
- 共済金受取人が甲である共済については、類推適用を論ずる余地はない。
判決文から
「保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって,保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく,これらの者の相続財産に属するものではない」
保険金請求権が受取人固有の権利であることの確認
「死亡保険金請求権は,被保険者が死亡した時に初めて発生するものであり,保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく,被保険者の稼働能力に代わる給付でもない」
実質的にも被相続人の財産といえない理由
「不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となる」
例外として903条を類推適用する規範の核心
「保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」
特段の事情の考慮要素(答案で列挙する部分)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
