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最決平成16年1月20日

極度に畏怖させ、他の行為を選べない精神状態の被害者に命じて車ごと海に飛び込ませた行為を、殺人罪の実行行為と認めた事例

刑法生命・身体に対する罪共同正犯行政上の強制手段本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法R2・司法R6

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
平成14(あ)973 公正証書原本不実記載,同行使,殺人未遂被告事件
裁判
決定・棄却
判例集
刑集 第58巻1号1頁
参照法条
刑法38条,刑法199条,刑法202条,刑法203条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

自殺させて保険金を取得する目的で被害者に命令して岸壁上から自動車ごと海中に転落させた行為が殺人未遂罪に当たるとされた事例

裁判要旨

自動車の転落事故を装い被害者を自殺させて保険金を取得する目的で,極度に畏怖して服従していた被害者に対し,暴行,脅迫を交えつつ,岸壁上から車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し,被害者をして,命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていたなど判示の事実関係の下においては,被害者に命令して岸壁上から車ごと海中に転落させた行為は,被害者において,命令に応じて自殺する気持ちがなく,水没前に車内から脱出して死亡を免れた場合でも,殺人未遂罪に当たる。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

ホストである被告人は、客だった被害者が遊興費を払えなかったことから、激しい暴行・脅迫で強い恐怖心を抱かせ、風俗店で働かせて支払わせていた。その後、保険金目的で被害者を合計13件の生命保険に加入させた。さらに偽装結婚をして、受取人を自己に変更させた。

借金返済の必要に迫られた被告人は、自動車の海中転落事故を装って被害者を直ちに自殺させ、災害死亡時合計5億9800万円の保険金を得ようと企てた。犯行前日、漁港で車ごと飛び込むよう命じ、ためらう被害者を殴打した。さらに自ら運転して転落直前で停止して見せるなどして迫り、「絶対やれよ。やらなかったらおれがやってやる。」と告げて実行を翌日に持ち越させた。

被害者に自殺する気持ちはなかった。しかし、逃げても探し出されるなどと思い悩み、車ごと飛び込んで生き残る可能性にかけ、死亡を装って身を隠そうと考えた。当日、被告人はドアロック・窓を閉めること・シートベルト着用を指示して飛び込むよう命じ、現場を離れた。被害者は窓を開け、シートベルトをせずに岸壁から車ごと海中に転落したが、水没前に脱出して死亡を免れた。現場は海面まで約1.9m、水深約3.7m、水温約11度で、脱出に失敗し、あるいは冷水による心臓まひ等で死亡する危険性が極めて高かった。

争点

  • 被害者自身の行為(車ごと海中に転落)を利用した場合に、命令した被告人の行為が殺人罪の実行行為に当たるか
  • 被告人は被害者を「自殺させる」つもりだったが被害者に自殺意思がなかった場合に、殺人罪の故意が認められるか

判旨

殺人未遂罪(刑法199条・203条)の成立を認めた原判決を是認し、上告を棄却した。

  • 実行行為性:被告人を極度に畏怖して服従していた被害者に対し、暴行・脅迫を交えて自殺を執ように要求し、犯行当時、被害者を「命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態」に陥らせていた。そのうえで命令し、被害者に「自らを死亡させる現実的危険性の高い行為」に及ばせた場合、その命令して転落させた行為は殺人罪の実行行為に当たる。
  • 故意:被害者に自殺する気持ちがなかったことは被告人の予期に反する。しかし、被害者に死亡の現実的危険性の高い行為を強いたこと自体の認識に欠けるところがない以上、殺人罪の故意は否定されない。
  • 被害者が脱出して死亡を免れたので、殺人未遂罪となる。

判決文から

「被害者をして,被告人の命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていたものということができる。」

被害者の行為を利用する殺人の要件となる精神状態

「被害者をして,自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせたものであるから,被害者に命令して車ごと海に転落させた被告人の行為は,殺人罪の実行行為に当たるというべきである。」

実行行為性の結論と危険性の要件

「被害者に対し死亡の現実的危険性の高い行為を強いたこと自体については,被告人において何ら認識に欠けるところはなかったのであるから,上記の点は,被告人につき殺人罪の故意を否定すべき事情にはならないというべきである。」

自殺意思不存在の誤認は故意を阻却しない

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。