横領後の横領
抵当権設定による横領の後に行った売却も横領罪となり、売却だけを起訴したときは裁判所は先行行為を審理しない
出題:司法H30・予備H30・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 平成13(あ)746 業務上横領被告事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第57巻4号467頁
- 参照法条
- 刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)第1編第7章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)252条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)253条,刑訴法256条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了していた場合においてその後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了する行為と横領罪の成否 2 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときの審理方法
裁判要旨
1 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは,後行の所有権移転行為について横領罪の成立を肯定することができ,先行の抵当権設定行為が存在することは同罪の成立自体を妨げる事情にはならない。 2 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において,後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときは,裁判所は,所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり,犯罪の成否を決するに当たり,所有権移転行為に先立って横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかといった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきではない。
解説
事案
被告人は宗教法人Aの責任役員である。被告人はAの代表役員らと共謀し、業務上占有するA所有の土地1をB社に約1億円で、土地2をC社に1500万円で売却し、それぞれ所有権移転登記を了したとして、業務上横領罪で起訴された。
売却に先立ち、被告人は自らが経営するD社を債務者として、次の抵当権を設定し、登記を了していた。
- 土地1:昭和55年に根抵当権①、平成4年3月に抵当権②
- 土地2:平成元年に抵当権③
原判決の判断は次のとおりである。
- ①③は、横領罪を構成するか明瞭でなく、仮に構成するとしても公訴時効が完成している。
- ②は横領に当たるが、土地売却の方がはるかに重要である。
- 以上から、売却が不可罰的事後行為に当たることを否定し、第1審の有罪判決を是認した。
弁護人は、抵当権設定後の所有権移転は別に横領罪を構成しないとした最判昭和31年6月26日に違反すると主張して上告した。
争点
- 他人の不動産に無断で抵当権を設定し登記した後、さらに無断で売却して所有権移転登記をした場合、後行の売却について横領罪が成立するか
- 後行の所有権移転行為のみが起訴された場合、裁判所は訴因外の先行抵当権設定行為(による横領罪の成否)を審理判断すべきか
判旨
上告棄却。最判昭和31年6月26日を、本判決の見解に反する限度で変更した(刑訴法410条2項)。
- 規範1(実体):委託を受けて他人の不動産を占有する者が、無断で抵当権を設定し登記を了した後でも、その不動産は他人の物であり、受託者の占有も続いている。その後に無断で売却等の所有権移転行為をして登記を了すれば、委託の任務に背き、権限なく所有者でなければできない処分をしたことになる。したがって横領罪(刑法252条・253条)が成立し、先行の抵当権設定行為の存在は後行行為の犯罪成立自体を妨げない。
- 規範2(手続):検察官は、罪数評価のいかんにかかわらず、事案の軽重・立証の難易等を考慮して、後行の所有権移転行為だけを起訴できる。その場合、裁判所は所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり、先行の抵当権設定行為が横領罪を構成するかといった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきではない。
- 以上は業務上横領罪でも同様である。
判決文から
「委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後においても,その不動産は他人の物であり,受託者がこれを占有していることに変わりはなく」
抵当権設定後も「他人の物の占有」が続くという構成要件の基礎
「先行の抵当権設定行為が存在することは,後行の所有権移転行為について犯罪の成立自体を妨げる事情にはならないと解するのが相当である。」
要旨1の結論部分
「検察官は,事案の軽重,立証の難易等諸般の事情を考慮し,先行の抵当権設定行為ではなく,後行の所有権移転行為をとらえて公訴を提起することができるものと解される。」
検察官の訴追裁量(一部起訴)を肯定した部分
「裁判所は,所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり,犯罪の成否を決するに当たり,売却に先立って横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかというような訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきものではない。」
要旨2。審判対象は訴因に限られる
「訴因外の犯罪事実をめぐって,被告人が犯罪成立の証明を,検察官が犯罪不成立の証明を志向するなど,当事者双方に不自然な訴訟活動を行わせることにもなりかねず,訴因制度を採る訴訟手続の本旨に沿わないものというべきである。」
訴因外事情に立ち入らない理由
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
