最決平成14年9月30日
都の動く歩道設置に伴う段ボール小屋撤去工事を、強制力を行使する権力的公務でないとして「業務」に当たるとし、要保護性も肯定した。
出題:司法R1・司法R2・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成10(あ)1491 威力業務妨害被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第56巻7号395頁
- 参照法条
- 刑法234条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事が威力業務妨害罪にいう「業務」に当たるとされた事例 2 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事に威力業務妨害罪としての要保護性が肯定された事例
裁判要旨
1 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去した場合であっても,威力業務妨害罪にいう「業務」に当たる。 2 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去するに及んだものであっても,同工事が公共目的に基づくものであるのに対し,路上生活者は通路を不法に占拠していた者であり,行政代執行の手続を採ってもその実効性が期し難かったことなど判示の事実関係の下では,威力業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵を有しない。
解説
事案
東京都は、新宿駅西口から新宿副都心へ通じる都道の地下通路に、動く歩道を設置する計画を立てた。この通路には約200名の路上生活者が段ボール小屋で起居しており、通路を占用する権原はなかった。
都は臨時保護施設を開設し、事前に3回の周知活動を行って、工事の事前通告と自主的退去の促しをした。そのうえで、段ボール等の撤去、バリケード設置、床タイル撤去から成る環境整備工事を実施することにした。
被告人両名は、工事を実力で阻止するため、路上生活者に指示してバリケードを構築させ、約100名で座り込んで都職員の進入を阻止した。さらに、都職員らに鶏卵・旗竿・花火等を投げ付け、消火器を噴射し、「帰れ」と怒号した。
警察官が座込みの者を排除・連行した後、都職員は工事に着手した。残っていた数名は説得に応じて自ら退去した。都職員は、排除・連行された者のものを含めて段ボール小屋を全部撤去し、有価物は保管した。被告人両名は威力業務妨害罪で起訴された。
争点
- 公務である本件工事が刑法234条の「業務」に当たるか
- 路上生活者の意思に反して段ボール小屋を撤去した点が「業務」性を否定するか
- 本件工事に威力業務妨害罪としての要保護性が認められるか(法的瑕疵の有無)
判旨
上告棄却。威力業務妨害罪の成立を認めた。
- 「業務」該当性:本件工事は、路上生活者に自主的退去を説得し、退去後に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事である。これは強制力を行使する権力的公務ではないから、刑法234条の「業務」に当たる。警察官が路上生活者を排除・連行した後に、その意思に反して段ボール小屋を撤去した場合でも、結論は異ならない。
- 要保護性:次の事情を総合すると、撤去はやむを得ない事情に基づくものであり、業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵はない。
- 工事が公共目的に基づくこと
- 路上生活者が通路を不法に占拠していたこと
- 財産的不利益がごくわずかであること
- 居住上の不利益への行政的対策があったこと
- 事前周知により不意打ちを避けたこと
- 行政代執行では実効性が期し難かったこと
判決文から
「強制力を行使する権力的公務ではないから,刑法234条にいう「業務」に当たると解するのが相当であり」
公務の業務性に関する限定肯定の判断基準
「このことは,前記1(8)のように,段ボール小屋の中に起居する路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反してその段ボール小屋が撤去された場合であっても異ならないというべきである。」
意思に反する撤去を含んでも業務性は否定されない
「道路管理者である東京都が本件工事により段ボール小屋を撤去したことは,やむを得ない事情に基づくものであって,業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵があったとは認められない。」
要保護性を「法的瑕疵」の有無で判断する枠組み
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
