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「石に泳ぐ魚」事件

最判平成14年9月24日

公的立場にない私人をモデルとする小説について、名誉・プライバシー等の侵害を理由とする出版差止めを認めた原審を是認した事例

民法請負・委任・寄託物権総論・物権変動幸福追求権・プライバシー本試験で 4 問(短答 4・論文 0)

出題:司法H22・司法H29・予備H24

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
平成13(オ)851 損害賠償等請求事件
裁判
判決・棄却
判例集
集民 第207号243頁
参照法条
民法1条ノ2,民法198条,民法199条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

名誉,プライバシー等の侵害に基づく小説の出版の差止めを認めた原審の判断に違法がないとされた事例

裁判要旨

甲をモデルとし,経歴,身体的特徴,家族関係等によって甲と同定可能な乙が全編にわたって登場する小説において,乙が顔面にしゅようを有すること,これについて通常人が嫌う生物や原形を残さない水死体の顔などに例えて表現されていること,乙の父親が逮捕された経歴を有していることなどの記述がされていることなど判示の事実関係の下では,公共の利益にかかわらない甲のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む同小説の出版により公的立場にない甲の名誉,プライバシー及び名誉感情が侵害され,甲に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるとして,同小説の出版の差止めを認めた原審の判断には,違法がない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

韓国籍の女性X(大学院生)は、幼少時から静脈性血管腫を患い、その血管奇形が外貌に現れていた。また、Xの父は日本の大学の国際政治学教授だったが、講演先の韓国でスパイ容疑により逮捕・投獄された経歴をもつ。著名な作家Dは、交友関係にあったXをモデルとする人物「J」が全編に登場する小説を執筆し、Y2社発行(Y1が編集兼発行者)の雑誌に掲載した。

  • 「J」には、Xと同じ大学の卒業、同じ大学院・専攻への在籍、顔面の完治の見込みのない腫瘍、父の逮捕歴など、Xと一致する特徴が与えられていた。
  • 一方で、問題のある団体として描かれた新興宗教に入信したという虚構の事実も書かれていた。
  • 腫瘍は、通常人が嫌う生物や原形を残さない水死体の顔などに例えて、苛烈に描写されていた。

Xは公表を承諾しておらず、Dを信頼して話した私的な事柄が多く書かれていたことに激しい衝撃を受けた。XはD・Y1・Y2に慰謝料を、D・Y2に小説の出版等の差止めを求めた。原審は、100万円の連帯支払と出版等の差止めを命じた。

争点

  • モデル小説の公表により、モデルとされた私人の名誉・プライバシー・名誉感情が侵害されたといえるか
  • 人格権としての名誉権等に基づき、小説の出版等の差止めを求めることができるか、またその要件
  • 出版差止めを認めることが憲法21条1項に反しないか

判旨

上告棄却。

  • 本件小説は、公共の利益に係わらないXのプライバシーにわたる事項を表現内容に含む。その公表により、公的立場にないXの名誉・プライバシー・名誉感情が侵害された。
  • 本件小説の出版等により、Xに重大で回復困難な損害を被らせるおそれがある。
  • したがって、人格権としての名誉権等に基づく各請求(慰謝料・差止め)を認容した原審判断に違法はない。
  • この判断は、最大判昭和44年6月25日・最大判昭和61年6月11日の趣旨に照らし、憲法21条1項に違反しない。

原審が示した判断枠組みは次のとおりである(最高裁はこの枠組みを一般論として明示的に採用してはおらず、原審の判断に違法はないとしたにとどまる)。

  • 人格権に基づき、現に行われている侵害行為の排除や、将来生ずべき侵害の予防として差止めを求めうる。
  • 差止めの可否は、被害者の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ、被害者側の不利益と侵害者側の不利益を比較衡量して決する。
  • 侵害行為が明らかに予想され、被害者が重大な損失を受けるおそれがあり、かつ事後の回復が不可能ないし著しく困難であるときは、差止めを肯認すべきである。

判決文から

「公共の利益に係わらない被上告人のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む本件小説の公表により公的立場にない被上告人の名誉,プライバシー,名誉感情が侵害されたものであって」

公共性なし・私人という差止め肯定の決め手

「本件小説の出版等により被上告人に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるというべきである」

差止めを認める損害要件の当てはめ

「予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべきである」

原審の比較衡量基準(最高裁は原審の結論に違法はないとした)

「侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきである」

差止め肯認の具体的要件(原審)

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。