最決平成14年2月8日
係員を欺いてローンカードを交付させた点は詐欺罪、そのカードでATMから現金を引き出した点は窃盗罪が別に成立するとした決定
出題:司法H27・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 平成13(あ)1341 窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺被告事件
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第56巻2号71頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法246条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
消費者金融会社の係員を欺いてローンカードを交付させた上これを利用して同社の現金自動入出機から現金を引き出した場合の罪責
裁判要旨
消費者金融会社の係員を欺いてローンカードを交付させた上これを利用して同社の現金自動入出機から現金を引き出した場合には,同係員を欺いて同カードを交付させた点につき詐欺罪が成立し,同カードを利用して現金自動入出機から現金を引き出した点につき窃盗罪が成立する。
解説
事案
消費者金融A社では、カードローン基本契約を結んでローンカードを受け取った契約者は、各店舗の現金自動入出機(ATM)にカードを挿入して操作すれば、契約極度額の範囲で何回でも借入れができる。ATMは、カードが挿入され暗証番号が正しく入力されれば、所持人が正当な所持人でなくても自動的に貸付金相当額の現金を交付する仕組みである。
被告人は、他人になりすましてローンカードの交付を受け、ATMから現金を引き出そうと企てた。被告人は、群馬県館林市内の無人契約機コーナーの無人契約機を介し、不正に入手した他人名義の運転免許証で氏名等を偽った。これにより前橋市内にいる同社係員を欺いて他人名義で基本契約を締結し、ローンカードの交付を受けた。約5分後、同コーナー内のATMに同カードを挿入して操作し、現金20万円を引き出した。被告人は、現金引出しの際に係員からATMの操作の教示を受けたと供述している。
弁護人は、1個の詐欺罪しか成立しないと主張した。
争点
- 係員を欺いてローンカードを交付させ、直後にそのカードでATMから現金を引き出した行為は、1個の詐欺罪にとどまるか、詐欺罪と窃盗罪が別に成立するか
- カード交付を担当した係員が、ATM内の現金について処分行為をしたといえるか
判旨
上告棄却。職権判断で、カードを交付させた点に詐欺罪(刑法246条1項)、カードでATMから現金を引き出した点に窃盗罪(刑法235条)が成立するとした原判決を正当とした。
規範は次のとおり。
- カードローン契約の法的性質、ローンカードの利用方法・機能・財物性に照らすと、係員を欺いてカードを交付させる行為と、カードでATMから現金を引き出す行為は、社会通念上別個の行為類型に属する。
- 基本契約の締結とカード交付を担当した係員は、これらの行為によってATM内の現金を交付するという処分行為をしたとは認められない。
- 被告人は、重要な財物であるカードの交付を受けたうえで、自らATMを操作して現金を引き出したものである。
係員から操作の教示を受けたという事情も、この評価を左右しない。
判決文から
「同社係員を欺いて同カードを交付させる行為と,同カードを利用して現金自動入出機から現金を引き出す行為は,社会通念上別個の行為類型に属するものであるというべきである。」
カード詐取と現金引出しを別行為と評価した核心部分
「上記基本契約の締結及びローンカードの交付を担当した同社係員は,これらの行為により,上記無人契約機コーナー内に設置された現金自動入出機内の現金を被告人に対して交付するという処分行為をしたものとは認められず」
現金について係員の処分行為を否定し詐欺を排除した点
「被告人は,上記2のような機能を持つ重要な財物である同カードの交付を受けた上,同カードを現金自動入出機に挿入し,自ら同機を操作し作動させて現金を引き出したものと認められる。」
カードの財物性と自らの機械操作による奪取の認定
「被告人が供述する上記のような事情は,被告人の行為及び同社係員の行為の性質に関する前記評価に影響を及ぼすものとは認められない。」
係員の操作教示があっても結論は変わらない
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