証券取引法164条事件
短期売買利益の提供請求を定める証取法164条1項を、比較考量の枠組みで審査して憲法29条に反しないとした大法廷判決
出題:司法H22・司法R2・司法R5
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 平成12(オ)1965 短期売買利益返還請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第56巻2号331頁
- 参照法条
- 証券取引法164条1項,憲法29条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 証券取引法164条1項の趣旨 2 証券取引法164条1項と憲法29条
裁判要旨
1 証券取引法164条1項は,上場会社等の役員又は主要株主が同項所定の有価証券等の短期売買取引をして利益を得た場合には,同条8項に規定する内閣府令で定める場合に当たるとき又は類型的にみて取引の態様自体から役員若しくは主要株主がその職務若しくは地位により取得した秘密を不当に利用することが認められないときを除き,当該取引においてその者が秘密を不当に利用したか否か,その取引によって一般投資家の利益が現実に損なわれたか否かを問うことなく,当該上場会社等はその利益を提供すべきことを当該役員又は主要株主に対して請求することができるものとした規定である。 2 証券取引法164条1項は,憲法29条に違反しない。
解説
事案
東京証券取引所第2部に株式を上場する会社(被上告人)が、主要株主(上告人)に対し、証券取引法(法)164条1項に基づいて短期売買利益の提供を求めた事件である。
- 上告人は自己の計算で、平成11年中に数回にわたり被上告人株式を買い付け、それぞれ6か月以内に売り付けて、合計2018万3691円の短期売買利益を得た。
- 上告人は次のように主張した。同項はインサイダー取引を規制して一般投資家を保護する趣旨の規定である。本件の売付けの相手方と上告人とは代表者および株主が同一であり、秘密の不当利用も一般投資家の損害もない。したがって同項は適用されないと解すべきであり、そう解さなければ同項は憲法29条に違反する。
- 原審は、秘密の不当利用や一般投資家の損害は同項適用の要件ではないとし、同項を合憲とした。上告人が上告した。
争点
- 証券取引法164条1項の適用に、秘密の不当利用や一般投資家の損害発生が必要か(同項の趣旨)
- 同項による短期売買利益の提供請求が財産権を侵害し憲法29条に違反するか
判旨
上告棄却(裁判官全員一致)。
- 法164条1項の解釈:同項は、客観的な適用要件を定めて、役員・主要株主による秘密の不当利用を一般的に予防する規定である。短期売買で利益を得た場合には、秘密を不当に利用したか、一般投資家の利益が現実に損なわれたかを問わず、会社は利益の提供を請求できる。ただし、次の場合は同項は適用されない。
- 同条8項の内閣府令で定める場合
- 類型的にみて取引の態様自体から秘密の不当利用が認められない場合
- 憲法29条適合性の規範:財産権規制が29条2項の「公共の福祉」に適合するかは、規制の目的、必要性、内容、制限される財産権の種類、性質および制限の程度等を比較考量して判断する。
- あてはめと結論:規制目的は正当であり、規制手段が必要性または合理性に欠けることが明らかであるとはいえない。よって同項は公共の福祉に適合する制限であり、憲法29条に違反しない。
判決文から
「財産権に対する規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは,規制の目的,必要性,内容,その規制によって制限される財産権の種類,性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきものである。」
財産権規制の違憲審査の一般的枠組み
「その規制目的は正当であり,規制手段が必要性又は合理性に欠けることが明らかであるとはいえないのであるから,同項は,公共の福祉に適合する制限を定めたものであって,憲法29条に違反するものではない。」
目的・手段審査の結論部分(明白性の表現)
「一定期間内に行われた取引から得た利益の提供請求を認めることによって当該利益の保持を制限するにすぎず,それ以上の財産上の不利益を課するものではない。」
制限の程度が軽いことを手段審査で考慮
「個々の具体的な取引について秘密を不当に利用したか否かという事実の立証や認定は実際上極めて困難である」
客観的要件で一律規制することを正当化する根拠
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
