最判平成12年3月9日
離婚に伴う財産分与・慰謝料の合意は原則として詐害行為にならないが、過大な部分や超過部分に限って取り消せるとした判例
出題:司法H26・司法R7・司法R8・予備H26・予備R5・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成10(オ)560 配当異議事件
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第54巻3号1013頁
- 参照法条
- 民法424条,民法710条,民法763条,768条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意が詐害行為に該当する場合の取消しの範囲 二 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意と詐害行為取消権
裁判要旨
一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきである。 二 離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は、右損害賠償債務の額を超えた部分について、詐害行為取消権行使の対象となる。
解説
事案
XはDに対して貸金債権(約6000万円)を持ち、確定判決を得ていた。Dは平成4年1月末に取締役を退任して収入が途絶え、無資力となった。
Y(上告人)とDは平成3年に婚姻した。しかしDは働かずに飲酒してはYに暴力を振るい、平成6年6月1日に協議離婚した。その後、YとDは、他の債権者を害することを知りながら、次の内容を合意した(本件合意)。
- 生活費補助として、Yが再婚するまで毎月10万円を支払う
- 離婚に伴う慰謝料として2000万円を支払う
この合意について、執行認諾文言付きの公正証書が作成された。
XとYは、それぞれDの訴外会社に対する給料・役員報酬債権を差し押さえた。訴外会社は約261万円を供託し、執行裁判所は請求債権額に応じて案分する配当表を作成した。Xはこれに異議を申し出て、配当異議の訴えを提起した。
- 主位的請求:本件合意は通謀虚偽表示で無効
- 予備的請求:詐害行為取消権に基づく本件合意の取消し
第一審は主位的請求を認容した。原審は、虚偽表示を否定したうえで、合意の額は不相当に過大で財産分与に仮託したものだとして、合意全部の取消しを前提に予備的請求を認容した。
争点
- 離婚に伴う財産分与として金銭給付(定期給付を含む)をする合意が詐害行為に該当する場合、取り消せる範囲は全部か一部か
- 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は詐害行為取消権の対象となるか、なるとすればどの範囲か
- 詐害行為取消訴訟において、判決主文で合意を取り消さずに取消しの効果を認めてよいか
判旨
原判決中、予備的請求に関する部分を破棄し、差し戻した。
財産分与について
- 離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分と認めるに足りる特段の事情がない限り、詐害行為とはならない。
- 金銭の定期給付をする合意でも同様である。
- 特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度で詐害行為として取り消される。
慰謝料について
- 離婚に伴う慰謝料の支払合意は、既に発生した損害賠償債務を確認して額を確定する行為にすぎないから、原則として詐害行為とならない。
- ただし、負担すべき損害賠償債務の額を超えた部分は、詐害行為取消権行使の対象となる。
本件への当てはめ
- 過大な扶養的財産分与の額と、慰謝料の超過額を算出したうえで、その限度で合意を取り消すべきである。
- 配当表は、Yの請求債権から取り消された額を控除した残額とXの請求債権額に応じて変更すべきである。
- また、主文で本件合意を取り消さずに取消しの効果を認めた点も違法である。
判決文から
「財産分与として金銭の定期給付をする旨の合意をする場合であっても、同様と解される。」
昭和58年判決の規範を定期給付にも及ぼした
「離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、右特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものと解するのが相当である。」
財産分与の取消しは過大部分に限る(一部取消し)
「賠償額を確定してその支払を約する行為であって、新たに創設的に債務を負担するものとはいえないから、詐害行為とはならない。」
慰謝料合意が原則詐害行為とならない理由
「その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。」
超過部分を贈与・無償の債務負担と性質決定した
「主文において本件合意を取り消すことなく詐害行為取消しの効果の発生を認め、本件配当表の変更の請求を認容すべきものとした原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり」
主文で取り消すことが必要だとした職権判断
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
