逗子市情報公開条例事件
条例で非公開決定に理由付記が義務付けられていても、取消訴訟で付記していない非公開事由を主張できるとした判例
出題:司法H23・予備H28・予備R5
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成8(行ツ)236 公文書一部公開拒否処分取消請求事件
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第53巻8号1862頁
- 参照法条
- 逗子市情報公開条例(平成2年逗子市条例第6号)5条(2)ウ,逗子市情報公開条例(平成2年逗子市条例第6号)2条,逗子市情報公開条例(平成2年逗子市条例第6号)9条3項,逗子市情報公開条例(平成2年逗子市条例第6号)9条4項,逗子市情報公開条例(平成2年逗子市条例第6号)5条(2)ア
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 住民監査請求に関する一件記録に含まれる関係人の事情聴取記録の逗子市情報公開条例(平成二年逗子市条例第六号)五条(2)ウ該当性 二 逗子市情報公開条例(平成二年逗子市条例第六号)五条(2)ウに該当することを理由として付記してされた公文書の非公開決定の取消訴訟において実施機関が当該公文書に他の非公開事由があると主張することの許否 三 住民監査請求に関する一件記録に含まれる関係人の事情聴取記録の逗子市情報公開条例(平成二年逗子市条例第六号)五条(2)ア該当性
裁判要旨
一 いわゆる池子弾薬庫跡地内に所在する逗子市所有地の管理又は国への移転登記に関し必要な措置を講ずべきこと等を求める住民監査請求につき逗子市監査委員が横浜防衛施設局職員から事情聴取をした内容を記録した文書は、全国の未登記土地に関する国と所有名義人との間における民事上の紛争の処理の仕方、手法についての供述や、国の民事訴訟解決の手の内が示されているのであれば、逗子市情報公開条例(平成二年逗子市条例第六号)において公文書の非公開事由を定めた五条(2)ウにいう「争訟の方針に関する情報」に当たらないとはいえない。 二 公文書の非公開事由を定めた逗子市情報公開条例(平成二年逗子市条例第六号)五条(2)ウに該当することを理由として付記してされた公文書の非公開決定の取消訴訟において、実施機関が、右決定が適法であることの根拠として、当該公文書が同条(2)アに該当すると主張することは、許される。 三 いわゆる池子弾薬庫跡地内に所在する逗子市所有地の管理又は国への移転登記に関し必要な措置を講ずべきこと等を求める住民監査請求につき逗子市監査委員が右登記事務に関係した同市職員、横浜防衛施設局職員等の関係行政機関の職員から事情聴取をした内容を記載した文書は、同監査委員限りで参考にすることにとどめ公開しないことを前提として提供された機密にわたる情報が含まれているのであれば、逗子市情報公開条例(平成二年逗子市条例第六号)において公文書の非公開事由を定めた五条(2)アにより非公開とすることができる文書に当たらないとはいえない。
解説
事案
Xは、逗子市情報公開条例に基づき、実施機関Yに対し、昭和59年と昭和60年の2件の住民監査請求に関する各一件記録の公開を請求した。両監査請求は、池子弾薬庫跡地内の市所有地の管理や、市が国に対してした所有権移転登記の当否をめぐるものである。60年監査請求の請求人らは住民訴訟を提起しており、また跡地内の未登記土地について所有名義人と国との間で民事訴訟も係属していた。
Yは、監査委員が市職員や横浜防衛施設局などの関係行政機関の職員から事情聴取した記録(本件各文書)について、条例5条(2)ウ(争訟の方針に関する情報等)に当たるという理由を通知書に付記して非公開決定をした。Xがその取消しを求めて提訴すると、Yは訴訟の中で、同条(2)ア(意思決定過程情報)に当たるとの主張を追加した。
原審は、(2)ウの「争訟の方針」を現に係属し、または具体的に予想される事案に即した方針に限定して、その該当性を否定した。また、付記していない(2)アの主張はそれ自体失当であるとし、併せてその該当性も否定して、非公開決定を取り消した。
争点
- 条例5条(2)ウにいう「争訟の方針に関する情報」の範囲(個別具体的な事案の方針に限られるか)
- 通知書に付記した非公開事由と異なる非公開事由を、取消訴訟で実施機関が主張することの可否(理由の差替え・追加)
- 監査委員による事情聴取記録が、条例5条(2)アの意思決定過程情報として非公開となりうるか(「意思決定を妨げる」の意義)
判旨
原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。
- 理由の差替え:条例9条4項が非公開決定に理由の通知を求める趣旨は、実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保して恣意を抑制すること、そして不服申立てに便宜を与えることにある。この目的は、非公開の理由を具体的に記載して通知させること自体によってひとまず実現される。理由通知の定めが、それを超えて、一度付記した理由以外の理由を取消訴訟で主張することまで許さない趣旨を含むと解すべき根拠はない。したがって、(2)ウを付記した非公開決定の取消訴訟で、実施機関が(2)アに該当すると主張することは許される。
- 争訟の方針:「争訟の方針に関する情報」は、争訟の帰すうに影響する情報のすべてではない。しかし、具体的事案に即した方針に限られず、行うことのあるべき争訟に対処するための一般的方針も含む。
- 意思決定過程情報:「意思決定を妨げる」には、将来の同種の意思決定の障害となること、さらに同種の意思決定のための資料収集に支障が生じることも含まれる。
判決文から
「非公開の理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当とを担保してそのし意を抑制するとともに、非公開の理由を公開請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与えることを目的としていると解すべきである」
理由通知(理由提示)制度の二つの趣旨
「そのような目的は非公開の理由を具体的に記載して通知させること(実際には、非公開決定の通知書にその理由を付記する形で行われる。)自体をもってひとまず実現される」
趣旨は処分時の理由提示で達成済みという論理
「一たび通知書に理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である」
理由の差替え・追加を許容する結論部分
「右規定にいう「意思決定を妨げる」とは、当該意思決定それ自体を妨げることのほか、将来における同種の意思決定の障害となることも含まれるものと解するのが相当である」
意思決定過程情報の支障を将来にも拡張
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