銀行貸出稟議書事件
自己利用文書(民訴法220条4号ニ、当時ハ)の判断基準を示し、銀行の貸出稟議書は特段の事情がない限りこれに当たるとした決定
出題:司法H24・司法R1・予備H24・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成11(許)2 文書提出命令に対する許可抗告事件
- 裁判
- 決定・破棄自判
- 判例集
- 民集 第53巻8号1787頁
- 参照法条
- 民訴法220条4号
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる場合 二 銀行の貸出稟議書と民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」
裁判要旨
一 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。 二 銀行において支店長等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について本部の決裁を求めるために作成され、融資の内容に加えて、銀行にとっての収益の見込み、融資の相手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見、審査を行った決裁権者が表明した意見などが記載される文書である貸出稟議書は、特段の事情がない限り、民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。
解説
事案
亡Jは銀行(抗告人)から6億5000万円の融資を受け、その資金で証券会社を通じて株式等の有価証券取引を行い、多額の損害を被った。Jの承継人(相手方)は銀行に損害賠償を求めた。主張の内容は、A支店長は、Jの経済状態からすれば利息は有価証券取引の利益から払うほかないと知りながら過剰な融資を実行したのであり、これは金融機関が顧客に負う安全配慮義務に違反する、というものである。
相手方は、有価証券取引で利息を上回る利益を上げられるという前提で稟議が行われたこと等を証明するため、銀行が所持する貸出稟議書と本部認可書(本件文書)について文書提出命令を申し立てた。その根拠として、本件文書は民訴法220条3号後段の文書に当たり、また4号ハ(現4号ニ)の自己利用文書に当たらないから4号の文書に当たると主張した。
原審は、稟議書・認可書は自己利用文書に当たらないとして提出を命じた。銀行が許可抗告した。
争点
- 民訴法220条4号ハ(現4号ニ)の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)に当たるかの判断基準
- 銀行の貸出稟議書(及びこれと一体を成す本部認可書)は自己利用文書に当たるか
- 自己利用文書に当たる文書は220条3号後段の法律関係文書に当たるか
判旨
原決定を破棄し、申立てを却下した(破棄自判)。
規範(自己利用文書の判断基準):作成目的、記載内容、現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、次の要件を満たす場合は、特段の事情がない限り自己利用文書に当たる。
- ①専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であること(内部文書性)
- ②開示されると個人のプライバシーが侵害されたり、個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあること(不利益性)
- ③特段の事情がないこと
あてはめ:銀行の貸出稟議書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部への開示が予定されていない。開示されると銀行内部の自由な意見表明に支障を来し、銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがある。したがって特段の事情がない限り自己利用文書に当たる。本件では特段の事情はうかがわれない。
また、自己利用文書に当たる以上、220条3号後段の文書にも当たらない。
判決文から
「専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど」
自己利用文書の要件①②の核心部分
「法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も記載されることが予定されているものである。」
稟議書が内部文書・不利益性ありとされる具体的理由
「本件文書が、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解される以上、民訴法二二〇条三号後段の文書に該当しないことはいうまでもないところである。」
自己利用文書は法律関係文書にも当たらないとした点
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
