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一部請求と相殺(明示的一部請求の残部による相殺の抗弁)

最判平成10年6月30日

明示的一部請求の残部を自働債権として別訴で相殺の抗弁を出すことは、権利濫用等の特段の事情がない限り許される。

民事訴訟法訴えの提起・訴訟物処分権主義判決の効力・既判力本試験で 2 問(短答 1・論文 1)

出題:予備R4・予備R7

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
平成6(オ)698 不当利得
裁判
判決・破棄差戻
判例集
民集 第52巻4号1225頁
参照法条
民法505条,民訴法114条,民訴法142条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

別訴において一部請求をしている債権の残部を自働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨

一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起している場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許される。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

Y(上告人)は、X(被上告人)が申請した違法な仮処分のため土地建物の持分を安値で売却させられ、2億5260万円の損害を被ったとして、不法行為に基づき内金4000万円の支払を求める別件訴訟を提起した。その後、XはYに対し、Yが支払うべき相続税・固定資産税・水道料金等を立て替えたとして、1296万円余の不当利得返還を求める本件訴訟を提起した。

Yは本件訴訟で次の相殺を主張した。

  • 第一審(予備的主張):上記損害賠償請求権のうち4000万円を超える部分を自働債権とする相殺
  • 第二審(追加主張):違法仮処分に対する異議手続の弁護士報酬2000万円とその遅延損害金の合計2478万円余の損害賠償請求権を自働債権とする相殺、および遺産である預金・現金の相続分相当額の支払請求権を自働債権とする相殺

原審は、最判平成3年12月17日の趣旨に照らし、売買代金低落分の残部と弁護士報酬分を自働債権とする相殺の主張をいずれも許されないとした。Yが上告した。

争点

  • 係属中の別訴で明示的一部請求をしている債権の残部を自働債権として、他の訴訟で相殺の抗弁を主張することは、民訴法142条の趣旨に反し許されないか
  • 一個の損害賠償請求権のうち、別訴で訴求していない弁護士報酬相当額の損害を自働債権とする相殺の許否

判旨

原判決中上告人敗訴部分を破棄し、差し戻した。

規範:一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合に、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟で相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許される。特段の事情の有無は、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等に照らして判断する。

あてはめ:弁護士報酬相当額の損害賠償請求権は、別件訴訟の請求債権と同じく違法仮処分に基づく一個の損害賠償請求権の一部を構成する。しかし、それは単なる数量的一部ではなく、実質的な発生事由を異にする別種の損害である。ほかに特段の事情もないから、この相殺の抗弁は許される。これを排斥した原審には法令の解釈適用の誤りがある。

判決文から

「既に係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することが許されないことは、原審の判示するとおりである」

平成3年判決の準則をまず確認している

「こと相殺の抗弁に関しては、訴えの提起と異なり、相手方の提訴を契機として防御の手段として提出されるものであり、相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから」

残部訴求と区別して相殺を許す核心の理由

「当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許されるものと解するのが相当である」

答案にそのまま使える規範部分

「単に数量的な一部ではなく、実質的な発生事由を異にする別種の損害というべきものである」

本件のあてはめで特段の事情を否定した根拠

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。