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最判平成10年6月11日

全財産遺贈の事案で、遺産分割協議の申入れに遺留分減殺の意思表示が含まれるとし、還付された内容証明郵便の到達も認めた

民法意思表示相続本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法H30・予備R7

裁判所
最高裁判所第一小法廷
事件番号
平成9(オ)685 遺留分減殺、土地建物所有権確認
裁判
判決・破棄差戻
判例集
民集 第52巻4号1034頁
参照法条
民法97条,民法907条,民法1031条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 遺産分割協議の申入れに遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべき場合 二 遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合に意思表示の到達が認められた事例

裁判要旨

一 被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべきである。 二 遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

Dは公正証書遺言で全財産を養子Yに遺贈して死亡した。相続人は実子Xらと、死亡の年に養子縁組したYである。Xらは平成6年2月9日に遺言書の写しを受け取り、減殺すべき遺贈があったことを知った。

  • 平成6年9月14日:X側の弁護士が「貴殿のご意向に沿って分割協議をすることにいたしました」と書いた普通郵便を送り、Yは受領した。Yはその後、別の弁護士に相談し、遺留分減殺について説明を受けた。
  • 同年10月28日:X側が遺留分減殺の意思表示を記載した内容証明郵便を発送した。Yは不在配達通知書で弁護士からの書留と知り、遺産分割に関するものと推測していたが、多忙を理由に受け取りに行かなかった。郵便は留置期間の経過で返送された。
  • 平成7年3月:X側が遺留分を認めるかを照会する普通郵便を送った。この時点では、1年の消滅時効期間(当時の民法1042条前段)が既に経過していた。

Xらは一貫して遺贈の効力を争っていない。原審は、普通郵便は減殺の意思表示を含まず、内容証明郵便も到達していないとして、Xらの請求を退けた。

争点

  • 遺産分割協議の申入れに遺留分減殺の意思表示が含まれると解すべき場合
  • 留置期間の経過で差出人に還付された内容証明郵便による意思表示が、相手方に「到達」(民法97条1項)したといえるか

判旨

原判決を破棄し、差し戻した。

  • 争点1:遺産分割と遺留分減殺は要件・効果が異なる。そのため、遺産分割協議の申入れに当然に減殺の意思表示が含まれるわけではない。しかし、次の場合には、特段の事情のない限り、その申入れに遺留分減殺の意思表示が含まれる。
  • 被相続人の全財産が相続人の一部に遺贈されたこと
  • 減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争わずに遺産分割協議を申し入れたこと
  • 争点2:「到達」とは、書面が相手方に直接受領・了知されることまでは要しない。相手方の了知可能な状態に置かれれば足りる。本件では次の事情がある。
  • 受取人は、不在配達通知書の記載その他の事情から、内容が減殺の意思表示(少なくともそれを含む分割協議の申入れ)であると十分に推知できた。
  • 受領の意思があれば、受取方法を指定して、さしたる労力・困難なく受領できた。

この事情の下では、意思表示は社会通念上了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間満了時に到達したと認められる。

判決文から

「遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない。」

原則として両者は別物であるという前提

「遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である。」

意思表示解釈の規範(争点1)

「右にいう「到達」とは、意思表示を記載した書面が相手方によって直接受領され、又は了知されることを要するものではなく、これが相手方の了知可能な状態に置かれることをもって足りるものと解される」

到達の一般的定義(了知可能性)

「本件内容証明郵便の内容である遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、被上告人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で被上告人に到達したものと認めるのが相当である。」

到達の肯定と到達時期(留置期間満了時)

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。