最判平成10年4月30日
被告の訴訟上の相殺の抗弁に対して、原告が訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは不適法で許されないとした判例
出題:司法R5・予備R2
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 平成5(オ)789 貸金
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第52巻3号930頁
- 参照法条
- 民法505条,民訴法114条2項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
訴訟上の相殺の抗弁に対し訴訟上の相殺を再抗弁として主張することの許否
裁判要旨
訴訟上の相殺の抗弁に対し訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは、許されない。
解説
事案
Dは上告人Yに対し、貸金と準消費貸借金(不渡りとなった担保手形の債権を目的とするもの)の支払を求めて訴えた。
- 抗弁:Yは第一審の口頭弁論期日に、訴訟上の相殺の意思表示をした。利息制限法の制限を超える天引利息から生じた不当利得返還請求債権(一)(二)を自働債権とし、準消費貸借金債権(一)(二)と対当額で相殺するというものである。
- 再抗弁:Dは同じ期日に、手形(三)の債権を自働債権とし、Yの不当利得返還請求債権(一)(二)と相殺する訴訟上の相殺の意思表示をした。
- 再々抗弁:Yは控訴審で、不当利得返還請求債権(三)を自働債権とし、手形(三)の債権と相殺する旨を主張した。
原審の判断は次のとおりである。
- 同一期日の準備書面の陳述はDの方が時間的に早かったから、Dの相殺が先に効力を生じた。
- そのためYの再々抗弁は、受働債権が既に消滅していて効果がない。
- 結論として、相殺後に残存する準消費貸借金債権の限度で請求を一部認容した。
Yが上告した。
争点
- 被告の訴訟上の相殺の抗弁に対し、原告が訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは許されるか
- 訴訟外でされた相殺の意思表示を再抗弁として主張することとの違い
判旨
原判決中Yの敗訴部分を破棄し、Dらの控訴を棄却した(請求棄却の第一審判決を維持)。
規範
- 被告による訴訟上の相殺の抗弁に対し、原告が訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは、不適法として許されない。
- これに対し、訴訟外で相殺の意思表示がされた場合は、相殺の要件を満たす限り確定的に相殺の効果が生じるから、これを再抗弁として主張することは妨げられない。
あてはめ
- 手形(三)の債権を自働債権とするDの相殺の再抗弁は不適法である。
- したがって、Yの不当利得返還請求債権(一)(二)の全額を自働債権として相殺の効果が生じ、準消費貸借金債権(一)(二)は全額消滅する。
- よって請求は理由がない。
- 原審は、同一期日における陳述の先後からDの相殺が先に効力を生じたとして、Dの相殺の再抗弁を有効と扱い、請求を一部認容した。この原判決は、訴訟上の相殺に関する法令の解釈を誤ったものとされた。
判決文から
「被告による訴訟上の相殺の抗弁に対し原告が訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは、不適法として許されないものと解するのが相当である。」
結論となる規範
「訴訟外において相殺の意思表示がされた場合には、相殺の要件を満たしている限り、これにより確定的に相殺の効果が発生するから、これを再抗弁として主張することは妨げない」
訴訟外の相殺は再抗弁として適法
「訴訟上の相殺の意思表示は、相殺の意思表示がされたことにより確定的にその効果を生ずるものではなく、当該訴訟において裁判所により相殺の判断がされることを条件として実体法上の相殺の効果が生ずるものである」
訴訟上の相殺の条件的性質
「仮定の上に仮定が積み重ねられて当事者間の法律関係を不安定にし、いたずらに審理の錯雑を招くことになって相当でなく」
第一の理由(法律関係の不安定・審理の錯雑)
「仮に、右債権について消滅時効が完成しているような場合であっても、訴訟外において右債権を自働債権として相殺の意思表示をした上で、これを訴訟において主張することができる」
時効完成債権でも不都合がないこと
「民訴法一一四条二項(旧民訴法一九九条二項)の規定は判決の理由中の判断に既判力を生じさせる唯一の例外を定めたものであることにかんがみると、同条項の適用範囲を無制限に拡大することは相当でない」
第三の理由(114条2項の例外性)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
