最判平成10年2月13日
未登記の通行地役権について、通路としての使用が客観的に明らかで、承役地の譲受人がそれを認識していたか認識できたときは、譲受人は原則として177条の第三者に当たらない
出題:司法H24・司法H28・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 平成9(オ)966 通行地役権設定登記手続等
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第52巻1号65頁
- 参照法条
- 民法177条,民法280条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
設定登記のされていない通行地役権について承役地の譲受人が登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないと解すべき場合
裁判要旨
通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。
解説
事案
Dは昭和46年ころ、所有地を6区画の宅地と、その中央を南北に貫く幅員約4mの通路に造成した。通路の北端は公道に通じていた。西側の里道は有効幅員1mにも満たなかった。
- 昭和49年、Dは西側中央の区画をX(被上告人)に売却した。その際、通路北側半分(本件係争地)に、無償・無期限の通行地役権を設定することを黙示に合意した。Xは以後、本件係争地を継続的に通路として使用した。
- 昭和50年ころ、Dは他の3区画と通路部分をEに売却した。EはDから地役権設定者の地位を承継することを黙示に合意した。Eは本件係争地をアスファルト舗装し、排水溝を設けるなどして通路とした。昭和58年以降、Xが自動車や徒歩で本件係争地を通行しても、Eは異議を述べなかった。
- 平成3年、EはY(上告人)に土地を売却した。地位承継の合意はなかった。Yは買受けの際、Xが本件係争地を通路として利用していることを認識していたが、Xに通行権の有無を確認しなかった。
- 地役権設定登記はされていなかった。原審はYを背信的悪意者として、Yは地役権設定登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとした。
争点
- 未登記の通行地役権について、承役地の譲受人は民法177条の「第三者」(登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者)に当たるか
- 譲受人が地役権設定の事実を知らなかった場合でも、第三者性が否定されるか(背信的悪意者論との関係)
判旨
上告棄却(Yの第三者性を否定した原審の結論を是認)。
- 規範:通行地役権の承役地が譲渡された場合、次の①②を満たせば、譲受人は、通行地役権の設定を知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらない。
- ① 譲渡の時に、承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが、その位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであること
- ② 譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったこと
- 特段の事情の例:譲受人が通路としての使用を無権原のものと認識しており、かつ、そう認識したことについて地役権者の言動が原因の一半を成している場合。
- この結論は背信的悪意者であることを理由とするものではない。したがって、譲受人が地役権設定の事実を知っていたことは要しない。
- 本件では①②を満たし、特段の事情もうかがわれないため、Yは第三者に当たらない。原審がYを背信的悪意者としたのは「措辞適切を欠く」が、結論は正当とした。
判決文から
「当該第三者に、不動産登記法四条又は五条に規定する事由のある場合のほか、登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には、当該第三者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。」
信義則による第三者性否定の一般的枠組み
「何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって、右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは、通常は信義に反するものというべきである。」
第三者性を否定する実質的理由
「承役地の譲受人が通路としての使用は無権原でされているものと認識しており、かつ、そのように認識するについては地役権者の言動がその原因の一半を成しているといった特段の事情がある場合」
例外となる「特段の事情」の具体例
「なお、このように解するのは、右の譲受人がいわゆる背信的悪意者であることを理由とするものではないから、右の譲受人が承役地を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを要するものではない。」
背信的悪意者論と区別し、悪意を不要とした点
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
