寺西判事補分限事件(寺西判事補事件)
裁判官の「積極的な政治運動」禁止(裁判所法52条1号)は憲法21条1項に反しないとし、分限事件に憲法82条1項は適用されないとした
出題:司法H23・司法R3・司法R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 平成10(分ク)1 裁判官分限事件の決定に対する即時抗告
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 民集 第52巻9号1761頁
- 参照法条
- 裁判所法49条,裁判所法52条1項,憲法21条1項,憲法82条1項,裁判官分限法2条,裁判官の分限事件手続規則7条,非訟事件手続法6条,非訟事件手続法13条,民訴法55条,民訴法148条,刑訴法35条,刑訴規則26条,刑訴規則27条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 裁判所法五二条一号にいう「積極的に政治運動をすること」の意義 二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号と憲法二一条一項 三 裁判官が積極的に政治運動をしたとされた事例 四 裁判官が積極的に政治運動をしたことがその職務上の義務に違反するとして当該裁判官に対し戒告がされた事例 五 裁判官分限事件への憲法八二条一項の適用の有無 六 民事訴訟又は非訟の手続において期日に立ち会う代理人の数を制限することの可否
裁判要旨
一 裁判所法五二条一号にいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいい、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、行為の内容、行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。 二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号の規定は、憲法二一条一項に違反しない。 三 裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をした行為は、判示の事実関係の下においては、右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法五二条一号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当する。 四 裁判官が積極的に政治運動をしたことは、裁判所法四九条所定の懲戒事由である職務上の義務違反に該当し、当該行為の内容、その後の態度等判示の事情にかんがみれば、当該裁判官を戒告することが相当である。 五 裁判官分限事件には、憲法八二条一項は適用されない。 六 民事訴訟又は非訟の手続を主宰する裁判所は、その手続を円滑に進行させるために与えられた指揮権に基づいて、期日を開く場所の収容能力、当該期日に予定されている手続の内容、裁判所の法廷警察権ないし指揮権行使の難易等を考慮して、必要かつ相当な場合には、期日に立ち会う代理人の数を合理的と認められる限度にまで制限することができる。
解説
事案
仙台地裁判事補であった抗告人は、組織的犯罪対策法要綱骨子が答申された後、裁判官であることを明らかにして新聞に投書した。投書の内容は、令状審査は検察官・警察官の言いなりで、盗聴令状審査を裁判官に委ねるのは信頼できないというものであった。
その後、内閣が通信傍受法案等(本件法案)を国会に提出し、その取扱いは政治的問題となっていた。法案に反対する3団体は、法案を廃案に追い込む運動の一環として「つぶせ!盗聴法・組織的犯罪対策法」と銘打った集会を企画し、抗告人にシンポジウムのパネリストを依頼した。抗告人はこれを承諾した。
ところが、所長から懲戒もありうると警告され、抗告人はパネリストとしての発言を取りやめた。そのうえで集会当日(参加者約500人)、一般参加者席から判事補であることを明らかにし、「所長の警告でパネリストを辞退した。仮に法案に反対の立場で発言しても積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する」旨を発言した。
仙台高裁はこの言動を理由に分限裁判で戒告とし、抗告人が即時抗告した。
争点
- 裁判所法52条1号「積極的に政治運動をすること」の意義と判断方法
- 同号による禁止は憲法21条1項に違反するか
- 本件言動は同号に該当するか
- 私的行為としての政治運動が裁判所法49条の「職務上の義務」違反となるか
- 裁判官分限事件に憲法82条1項(裁判の公開)が適用されるか
- 民事・非訟手続で期日に立ち会う代理人の数を制限できるか
判旨
抗告棄却(戒告を維持)。
- 積極的政治運動の意義:「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって、裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいう。該当性は、行為の内容・経緯・場所等の客観的事情と、裁判官の意図等の主観的事情を総合考慮して決する。
- 合憲性:制約が合理的で必要やむを得ない限度にとどまる限り許される。具体的には、①目的が正当で、②目的と禁止との間に合理的関連性があり、③得られる利益と失われる利益との均衡を失しないなら、憲法21条1項に違反しない。本件禁止は合憲である。
- あてはめ:本件言動は、法案を廃案に追い込む党派的運動を積極的に支援・推進するもので、同号に該当する。
- 懲戒事由:同号の義務は職務遂行中か否かを問わず負う「職務上の義務」(裁判所法49条)に当たり、戒告が相当である。
- 公開原則:懲戒の裁判は実質的に行政処分であり、純然たる訴訟事件ではないから、分限事件に憲法82条1項は適用されない。
- 代理人数の制限:裁判所は、指揮権に基づき、必要かつ相当な場合には、期日に立ち会う代理人の数を合理的限度まで制限できる。
判決文から
「「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって、裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものが、これに該当すると解され」
52条1号の定義規範。答案でそのまま使える
「右の禁止の目的が正当であって、その目的と禁止との間に合理的関連性があり、禁止により得られる利益と失われる利益との均衡を失するものでないなら、憲法二一条一項に違反しないというべきである。」
合憲性審査の三段階の基準
「裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請より強いものというべきである。」
短答頻出。一般職公務員との比較
「それは単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎず」
意見表明への制約を間接的・付随的と位置づけた点
「裁判官に懲戒を課する作用は、固有の意味における司法権の作用ではなく、懲戒の裁判は、純然たる訴訟事件についての裁判には当たらないことが明らかである。」
82条1項が適用されない根拠
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
