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菜切包丁事件

最判平成元年11月13日

素手で迫る相手に菜切包丁を構えて脅した行為に防衛手段としての相当性を認め、正当防衛を肯定した事例

刑法違法性阻却(正当防衛・緊急避難)本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法R1・司法R5

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
昭和61(あ)782 暴力行為等処罰に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反
裁判
判決・破棄自判
判例集
刑集 第43巻10号823頁
参照法条
刑法36条,暴力行為等処罰に関する法律1条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

刑法三六条一項にいう「巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為」に当たるとされた事例

裁判要旨

年齢も若く体力にも優れた相手方が、「お前、殴られたいのか。」と言って手拳を前に突き出し、足を蹴り上げる動作をしながら目前に迫ってきたなど判示のような状況の下において、危害を免れるため、菜切包丁を手に取ったうえ腰のあたりに構えて脅迫した本件行為は、いまだ防衛手段として相当性の範囲を超えたものとはいえない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、駐車場所をめぐって、ダンプカーを運転するA(当時39歳)から警笛を鳴らされ、「邪魔になるから、どかんか。」などと怒号された。被告人が「言葉遣いに気をつけろ。」と言い返すと、Aは「お前、殴られたいのか。」と言って手拳を前に突き出し、足を蹴り上げる動作をしながら近づいてきた。被告人は、年齢も若く体格にも優れたAに本当に殴られるかもしれないと恐れて後ずさりしたが、Aはさらに目前まで追ってきた。被告人は逃げる途中、自車内の菜切包丁(刃体約17.7cm)を思い出し、これでAを脅して接近を防ごうと考えた。そこで包丁を取り出して右手で腰のあたりに構え、約3m離れて対峙するAに「殴れるのなら殴ってみい。」と言った。Aが「刺すんやったら刺してみい。」と言いながら二、三歩近づくと、さらに「切られたいんか。」と申し向けた。

起訴されたのは、暴力行為等処罰に関する法律1条違反(凶器を示した脅迫)と銃刀法22条違反(包丁の携帯)である。第一審は正当防衛を否定して有罪とした。原審は過剰防衛を認めたものの、有罪とした。

争点

  • 素手の相手に対し菜切包丁を構えて脅迫した行為が、刑法36条1項の「やむを得ずにした行為」(防衛手段としての相当性)に当たるか
  • 防衛のために包丁を携帯した行為(銃刀法22条違反)も違法性が阻却されるか

判旨

結論:正当防衛が成立し、被告人は無罪(原判決・第一審判決を破棄して自判)。

  • 急迫不正の侵害・防衛の意思:今にも身体に危害を加えようとする言動で目前に迫ってきたAの行為は、急迫不正の侵害に当たる。包丁を示した行為は自己の身体を防衛する意思に出たものである(この点の原判断は正当)。
  • 相当性:素手の相手に殺傷能力のある包丁を構えて脅迫したことを理由に相当性を否定した原判決は、36条1項の解釈適用を誤ったものである。年齢も若く体力にも優れたAに追い詰められ、接近を防いで危害を免れるため、やむなく包丁を腰に構えて脅したにとどまる。このように危害を避けるための防御的な行動に終始していた以上、防衛手段としての相当性の範囲を超えない。
  • 銃刀法違反:包丁の携帯は正当防衛行為の一部を構成するから、あわせて違法性が阻却される。
  • 答案用の規範:「やむを得ずにした行為」とは、防衛手段として相当性を有することをいう。その判断は、武器の形式的な対等性ではなく、当事者の体格・年齢差、侵害の態様、防衛行為の態様(防御的か攻撃的か)などの具体的事情から実質的に行う。

判決文から

「今にも身体に対し危害を加えようとする言動をもって被告人の目前に迫ってきたAからの急迫不正の侵害に対し、自己の身体を防衛する意思に出たものとみるのが相当であり」

急迫不正の侵害と防衛の意思を肯定した部分

「Aからの危害を避けるための防御的な行動に終始していたものであるから、その行為をもって防衛手段としての相当性の範囲を超えたものということはできない。」

相当性肯定の決め手は「防御的行動に終始」

「右行為は、Aの急迫不正の侵害に対する正当防衛行為の一部を構成し、併せてその違法性も阻却されるものと解するのが相当である」

包丁携帯(銃刀法違反)も違法性阻却

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。